ワルい上司をかっこ良く
やっつけられる可能性は低い

 普通の上司あるいは、いい上司がそんなことをしないのは、自分の権力欲に従って無茶なことをすることが、組織や集団にとって余計なコストを強いたり、良くない結果を招くことを知っているからだ。

 しかし、上記に挙げた上司のようなタイプは、自分の欲求をコントロールすることができない。彼らは、権力を通しての自己承認欲求が非常に強い場合や、精神的外傷が原因で権力欲が異常に強くなっている場合、あるいは何らかの発達障害を持っている場合もあるだろう。

 こういう上司はあまり仕事はできないに違いないと思う読者は多いだろうが、実は、ある程度成果を出せる能力のある人物であるケースが多い。権力欲や自己承認欲求が強いので、出世のためには頑張るのだ。だが、自分の得意分野を超えて権力を使おうとするので、問題を起こしてしまう。

 では、このタイプの上司にはどう対処するべきなのか。理想的なのは、「より分かっている」もっと上の上司が、その上司をコントロールするべきだ。彼・彼女が権限を行使できる範囲を、きっちり限定し、それ以上の意思決定を任せない。

 だが、現実はそういう上司がいない場合がほとんどだ。その場合、部下は上司のマウンティング行動に振り回されることになる。どうするべきか。

 ここ数年流行しているアドラー心理学に基づけば、「関わらない」ことが一番である。マウンティング行動をマウンティング行動とは解釈しないで、無視することが一番いい。上に述べたように、マウンティング動機からきている行動に正論で反論しても、上司の行動が変わることはまずないからだ。

 もし反論すると、それは上司の行動をマウンティングと認めた上で、「そのマウンティングは許さない」という意志を示したことになる。少なくとも上司にはそう映る。それはもう権力闘争に巻き込まれているのと同じだ。その後は泥沼の展開が待ち受けている可能性が高い。

 もしそれでも反論したいのならば、その泥沼を覚悟の上でやらねばならない。そうなると、大ヒットしたドラマ「半沢直樹」の主人公のような状況に置かれかねないだろう。そしてほとんどの場合、現実は半沢直樹のようにはいかない。そのことは知っておくべきだ。

 そう考えると、こういう上司を上司に出世させる者が、本来は最も責任を負うべきである。仕事ができるかどうかという側面ばかりを見て部下の昇進を決めるのではなく、仕事に打ち込むのはなぜか、そして権力の使い方が適切かをも見極めなくてはならない。つまりこれは人事の問題なのである。

 運悪くそういう上司の下に就いた部下は、少しの間身をかがめ、できるだけ関わらないようにしつつ、人事に「この人物問題あり」と思わせる証拠を積み上げることが、遠回りなようで一番効果な対処法だと筆者は考えている。