二つ目は法案作成の過程で厚労省が報告した労働時間の調査に、これまでだけで400件を超える「異常値」が含まれていたことだ。

 中でも「働き方改革」関連法案の今国会での成立を目指す政権に、都合のいい数字だったのが、裁量労働制の労働時間と一般労働の労働時間についてのデータだった。

「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、一般労働よりも短いというデータもある」

 1月29日の衆議院予算委員会。立憲民主党の長妻昭・代表代行の質問に対する、この安倍首相の答弁がすべての始まりだった。

 この2日後の予算委では、加藤勝信厚労相がこのデータの具体的な数値に言及。

「平均的な一般労働者の1日の実労働時間ですが、9時間37分に対して、企画業務型裁量労働制は9時間16分、とこういう数字もある」

 こう答弁した。

 裁量労働制で働く人の労働時間が、一般労働者より「21分も短い」という主張だ。

 野党側は「裁量労働制を拡大すれば、労働時間が長くなり、過労死が増える」と主張して、裁量拡大を盛り込んだ「働き方改革関連法案」に一貫して反対してきた。

 首相や加藤厚労相の答弁は、「裁量労働制は長時間労働になる」という野党の反論を突き崩そうという狙いが明確だった。

 野党側は、このデータに対して徹底的な追及を始める。同じタイミングで、ネット上でも、労働組合関係者や労働法学者らから、このデータについての疑問点が次々と指摘され始めた。

 厚労省は2月19日、この数字が「不適切だった」と認めて謝罪。安倍首相は2月14日に、答弁を撤回した。

 何が「不適切」だったのか。