「言葉の中から本物の笑顔が伝わらなければいけない。気持ちというものは、笑顔で伝えるものですから。作った笑顔から伝わるものではありません。僕もジャパネットたかたではそこを一番大事にしていた。監督や選手も、一人ひとりのファンやサポーターへどれだけ愛情をもって接していけるかです」

 ジャパネットたかたを急成長させたのは、高田氏自身がMCとして登場したテレビショッピング番組だった。演出用に意図的に甲高く発していた声だけでなく、見ている側を安心させ、信用させる笑顔がお茶の間の人気を呼んだ。

 そして、積み重ねられてきた真の笑顔に導かれた成果のひとつが3‐1の勝利とともに、J1へ自動昇格できる2位を確定させた、昨年11月11月のカマタマーレ讃岐戦だった。

 県中央部の諫早市にあるホームのトランスコスモススタジアム長崎は、J2参入を果たした2013シーズン以降では最多となる2万2407人の大観衆で埋め尽くされた。キャパシティである2万258人を超えるファンやサポーターが、歴史的瞬間を共有して魂を震わせた。

「僕は県北の佐世保市に住んでいますけど、以前はほとんどがV・ファーレン長崎のことを知りませんでした。今はどこに行っても、県民の皆さんから『サッカー頑張ってください』と笑顔でおっしゃっていただけるようになった。もう100倍くらい変わったと言ってもいいですよね。

 サッカーを通して県全体を活性化しよう、子どもたちに何か夢を与えたいという気持ちがすごく表れていますよね。皆さんに会うたびに感じている変化をもっと、もっと高めていくことと、その結果としてどうなればいいのか、ということを考えていくのが今年1年になると思っています」

 ベルマーレとの開幕戦は1‐2で一敗地にまみれた。開始8分で先制されたが、8分後には得意とするセットプレーから、キャプテンのDF高杉亮太が強烈なヘディングシュートを一閃。ベルマーレの守護神・秋元陽太が防いだこぼれ球に、DF田上大地が執念のダイビングヘッドを見舞った。

 先発した11人のうち、J1で出場経験のある選手はFC東京から加入した国見高校出身のDF徳永悠平と、清水エスパルスから加入して2年目のFW澤田崇の2人しかいない。高杉は34歳で、同点弾につながる直接フリーキックを蹴ったMF前田悠佑は33歳で初めてJ1のピッチに立っていた。

 その後は一進一退の攻防が繰り返されたが、後半35分に与えたファウルが均衡を崩した。MF秋野央樹が放った直接フリーキックのこぼれ球を、MF石川俊輝に押し込まれた。新たな歴史の1ページ目に白星を添えることはできなかったが、だからといって高田社長は落胆していない。