厚生労働省の地下倉庫にある労働時間等総合実態調査の調査票。この再集計に無駄なコストと時間とマンパワーが割かれることになる Photo:JIJI

厚生労働省のずさんなデータ不備問題により、政権が最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案に暗雲が垂れ込めている。ついに、安倍首相は裁量労働制を法案から削除する決断をした。だが、目玉法案の大幅修正にもかかわらず、政権はどこ吹く風だ。厚労省の怠慢。与野党による壮大なるチキンレース──。国民は、とんだ茶番劇を見せられている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

 安倍政権が裁量労働制を切り捨てた。2月28日夜、安倍首相が、働き方改革関連法案から裁量労働制の適用拡大に関する部分をごっそり削除する方針を決めたのだ。裁量労働制とは時間にとらわれない働き方の一つで、年収要件が設けられていない制度のことをいう。

 発端は、厚生労働省によるずさんなデータ不備問題である。「裁量労働制の人の労働時間は一般労働者より短い例もある」とする首相答弁の根拠となったデータに、次々と不備が見つかり、発言を撤回する事態になっていた。

 問題のデータとは、2013年度の労働時間等総合実態調査のこと。全国の労働基準監督官約4000人が企業へ立ち入り、労働時間や賃金を聞き取る方式で実施された。その生データに大量の誤りがあったばかりか、質問の違う調査(裁量労働制の労働時間と一般労働者の最長残業時間)を比べて答弁に誤用されていた。

 これまで、この調査は法案策定に関わる労働政策審議会の判断材料とされるなど、信頼性の高いものとされてきた。「労務管理に詳しい監督官が賃金台帳と照らし合わせながら付けているから正確だろう。一般統計とは違い、企業規模の大小が網羅されており万能だろう。そう思い込み、過去の習慣にあぐらをかいてしまった」(厚労省幹部)と認めるように、厚労省は無責任のそしりを免れない。

 言うまでもなく、働き方改革関連法案は政権が掲げる今国会の看板法案である。目玉の大幅修正なのだから、政権にとっては大きな痛手となりそうなものだが、実情は違うらしい。