大分県と言えば、筆者には旨いメシというイメージが強い。別府、由布院と日本屈指の温泉街をかかえており、筆者も昔、温泉旅行を楽しんだ思い出がある。その温泉旅行の際に、温泉街の食堂で食べたご飯が、ちょっと特徴的で、また、とても旨かった記憶がある。また、冬の時期に行ったので臼杵のふぐも食べたが、これも絶品だった。

 大分県は、西部には九重連山、南部には祖母山・傾山と高い山々、東側には豊後水道と、まさに自然豊かで、海と山の幸が豊富な地域である。さらに江戸時代以降は、大分の地域が各藩に細かく分けられて統治されたことから、大都市はできなかったものの、城下町がそれぞれにあり、各地域の特色がでた文化を形成した。食文化も各地域ごとに、やはり特色があり、他県に比べても、郷土の味が多数存在する土地なのである。

 そんな大分の特色が出ている店はどこかと、大分県の東京事務所に問い合わせたところ、担当の方も訪れたというオススメの店が、東京・調布市はつつじヶ丘にあるというので、さっそく訪れてみた。

刺身をタレにつけた「りゅうきゅう」は
ちょっと甘めの味が魚の旨さを引き立てる

 新宿から京王線に20分弱乗り、つつじヶ丘駅に到着した。南口の階段の一番上から、店の看板がすぐに目に入った。北口と比べるとちょっと寂しい感じの南口に、温かい雰囲気の縁側のついた建物が目立つ。縁側にはコタツがでていた。『ウラニワ』である。店長の大塚さんのお父さんが大分出身なのだそうだ。

 まずは大分といえば「かぼす」(かぼすの国内生産量の90%以上が大分産)。かぼすにまつわる酒をということで、メニューで目についたのが『カボッピー』だ。大分のかぼすのリキュールを『ホッピー』で割ったものである。アルコール度数もそこそこなので、スタートにはちょうどいい。そして、すぐ出るつまみを頼もうと、『姫野船長のクロメ』と『りゅうきゅう』を頼んだ。

甘く味付けされたりゅうきゅう(手前)と、佐賀関などで特産の粘りがある海藻のクロメを使った料理。

「クロメ」は昆布の一種で、大分市佐賀関港などで特産の海藻である。カジメやアラメに近く、粘りが強い。これを店では納豆、オクラ、山芋、なめこと、さらにネバネバ系の食材と混ぜ合わせる。かき混ぜれば混ぜるほど、粘りが増す。

 このネバネバしたやつを、かぼす味でさっと洗い流す。これは、いくらでも食べられるし、飲める組み合わせだ。

 そして、この店の「りゅうきゅう」がやってきた。「りゅうきゅう」は九州に行った時に何度が食べたことがあるが、新鮮な刺身をづけにしたものである。決まったレシピはなく、店や家庭によって、様々なバリエーションがある。