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スマートフォンの理想と現実

音楽配信はすでにピークアウト。曲がり角にさしかかったケータイコンテンツ産業の明日はどっちだ

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第18回】 2012年2月23日
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 ただし売上規模は2010年時点で、パッケージメディアの2836.1億円に対し音楽配信は859.9億円と、まだ大きく差がついている。すなわち、前者は漸減傾向にあり、後者を有力な商品に育てようとした道半ばだった。この結果を受けて、音楽産業は全体として減少傾向に陥ることになり、事業構造の大きな転換が迫られる状況に、いよいよ直面しつつある――と、ここまで書いたところで、事態は大きく動いた。

 iTunesを運営するAppleが、日本のiTunes Storeで販売する楽曲の全曲を、AAC 256kbpsでのエンコードおよびDRM(デジタル著作権管理)フリーの「iTunes Plus」仕様に変更することとなった。また同じタイミングで、これまでiTunes Storeでの楽曲配信を拒んできたソニーミュージックが、洋楽を中心に配信を開始するという。本稿執筆時点では私自身はまだ未確認だが、すでにこうした対応が確認できた利用者も多くいるようだ。

 これまで、ケータイ(フィーチャーフォン)、DRM、独自プラットフォームに固執してきた日本の音楽産業が、iTunesというデファクトのプラットフォームへDRMフリーという形で参画する。これは、日本の音楽配信において、革命的な出来事といえる。そしてこの引き金を引いたのが、スマートフォンだったというわけである。

スマートフォン普及の
影響はこれから

 端末環境の変化が、(結果論ではあるが)音楽産業そのものに影響を及ぼした。そしてその変化が、スマートフォンに起因していることは、概ね間違いない。つまり、スマートフォンの普及拡大が、関連する産業分野の基盤そのものも揺さぶっているということだ。

 もちろん音楽産業については、いくつかの個別事情を勘案する必要がある。もとより事業の多くが何らかのメディアに依存している以上、他の産業に比べメディアを含めた聴取環境の変化が産業構造に影響を与えやすいともいえる。

 また若年層が消費の主体をなす産業でもあり、少子化による若年層そのものの人口減少や、スマートフォンへの移行への感度の高さ等も相乗しやすい。実際、いくらスマートフォンの普及が進んでいるからとはいえ、全体的な移行状況等と比較すると、音楽配信の売上減少のペースはやや早い。おそらく若年層のスマートフォン移行と相関しているのだろう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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