「AIエージェント」は期待通りに普及しない?AIを迷子にさせる日本企業の構造的課題AIエージェントが本当に機能するには、日本企業特有の構造を見直す必要がある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

生成AIの普及に続き、2026年に期待されるAIエージェント。だが、マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、エージェントが本当に機能するには、日本企業特有の構造を見直す必要があると説く。エージェントを使いこなし、競争力を獲得する企業になるために必要なこととは。

生成AIへの幻滅と
AIエージェントへの期待

 2025年は多くの企業が競うように生成AIを導入しました。その背景には、「導入しないわけにはいかない」という空気があり、会議の文字起こしや議事録作成、資料の下書き、アイデア出しといった業務での活用は急速に広まりました。一方で「期待したほどの成果が得られていない」という不満の声も高まっています。

 マッキンゼーの2025年版レポートによれば、AI導入企業の中で 「大きな収益インパクト(EBIT)」を達成できているのはわずか6%に過ぎません。導入の裾野は広がったものの、実際に企業価値を生み出せているのは依然として一部の企業にとどまっているのです。他の調査でも「活用の手応えがない」「概念実証(PoC)で頓挫する」といった傾向が指摘されており、「使い道はあるが決定的な価値には結びついていない」という戸惑いが企業内に蔓延しています。

 こうした現状を打破するものとして、2026年に注目されているのが「AIエージェント」です。エージェントとは、従来のチャットボットのように指示を待つのではなく、「目的に合わせて自律的に動き、タスクを遂行するAI」のことです。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のように決まった手順をなぞるだけでなく、状況を見ながら判断して動く点が特徴です。