しかし、とりわけ筆者が現在勤めているマクロソフト・シンガポールでは、これはまったく意味のない行為でしかなかった。なぜなら転職採用であっても、人事部、上司になる人、同僚になる人、仕事の関係者、希望部署の大ボスと、職場のあらゆる立場の人たちと最低5回の面接を繰り返すので、採用が決まった時点で、すでに新しい職場の関係者に自分の能力を認められているからだ。

 それなのに入社してからも、ことあるごとに「自己アピール」を繰り返していると、新しい職場の人たちからは「付き合いにくい」「自分の領域を脅かす敵」などと思われてしまう。こうした人は、得てして自分の弱みを周囲に見せまいと見栄を張りたがるものだが、万一仕事で失敗してしまったとき、絶対に助けてもらえないだろう。一度も失敗せずに仕事を続けられる人間はいない。いくら個人主義・成果主義の世界といえども、いざというときに助けてもらえる環境づくりはリスク管理の側面からも必須になってくる。

 また、高い成果を目指す仕事となれば、同じ部署の同僚や他部署の関係者とワンチームになって働くことも多い。会社やチームにとっても利を生む行動こそが、大きな貢献を生み、結果として個人の高い評価につながるのだ。

 筆者がワンチームで周囲の人と助け合って働くようになったのは、シンガポールでは転職が多く、仕事自体もどんどん他国へ移管されることが日常茶飯事だったからだ。同じメンバーで同じ仕事を続けたいと思っても、自分ではコントロールできない外的要因で、チームの仕事がなくなることも多い。こうした流動的な環境下で生き残っていくには、チームで働ける間にベストな仕事をこなし、周囲の人と信頼や人脈を築き、次の仕事やポジションを確保できるよう助け合う必要があるのだ。

グローバル企業こそ
お互いの文化や考えを尊重し合う 

 シンガポールはアジアのハブと言われるように、マイクロソフト・シンガポールでもたくさんの異なる国籍のメンバーが働いている。シンガポールオフィスには、60ヵ国以上の国籍の人々が働いているし、筆者もいままでに15ヵ国の国籍のメンバーをマネージしてきている。