コンビニになってからの両親は、以前よりもさらに忙しそうだった。定休日がないからまったく休めない。オープン当初は父親が店長になって、店を切り盛りしたが、数ヵ月で疲労していった。それからはアルバイトだけでなく、店長を任せられる正社員も雇うようになった。忙しさは少しは改善したようだったが、それでも両親の気が休まることはなかった。

 睡眠不足の両親が心配で、大学生だったEさんもなるべく店を手伝った。夏休みなどは夜間の納品と検品に立ち会うようにした。地元のパン屋や本屋、駄菓子屋などが廃業するなか、Eさんの両親の経営するコンビニは確実に売上げをあげていった。Eさんが大学を出て、スーパーマーケットに就職した年、両親は隣の駅に2号店を出した。

 このころの両親が一番忙しく、母親が料理を作る時間もなくなった。朝は調理パン。昼は麺。夜はお弁当にスープ。冬はおでん。食事は店の商品ばかりになっていったが、Eさんはその味が好きだった。

 次々と新作が出てきて、どれも美味しくて飽きることはなかった。デザートもパンも美味しい。テーブルの上の弁当を温めて食べる独りの食事は、たまにわびしさを感じることもあるが、慣れてしまえば気軽だった。

スーパーのバックヤードで見た
人間関係のいやな面

 就職したスーパーマーケットでまず驚いたことは、主婦のパートさんの力が絶大だったことだ。「あの人は雑だからイヤ」「女子高生とレジを組むのはイヤ」。パートさんたちはEさんに、シフトに関する文句を言う。

 文句を言われるたびに、Eさんは胃が痛くなった。自分の仕事で残業するのは全然構わない。自分が上司から叱責されるのも構わない。しかし、母親くらいの年齢のおばさんたちの陰口を聞くのは気が滅入った。

 最も困るのは当日の休みの電話だ。「義父の介護で」「娘が風邪で保育園に行けなくて」。こんな時もEさんは胃が痛くなる。

 特に土日のシフト変更は憂鬱だ。「誰に店に出てもらおうか」。胃薬を手にとり、胃痛を和らげ元気な声で電話をする。「すみません。夕方に3時間だけ来ていただけませんか?」

 パートさんたちは本当によく働くからこそ、文句が出るのだと思い、親身に接するように努めた。