腹立つミスとそうでないミス
(撮影/佐久間ナオヒト)
岩瀬さん 先ほども言ったとおり、若い人がミスしてもなんとも思いません。ただ、繰り返すと腹立つかもしれません。
Aさん 同じようなミスを繰り返すことでしょうか?
岩瀬さん ミスには、「非難されるミス」と「非難されないミス」の2種類があると思います。
やっぱり非難されるミスっていうのは、同じ過ちを繰り返すことではないでしょうか。
誠実に真摯に努力してないっていうことですから。
Aさん であれば、初回は許されるというか……。
岩瀬さん やったことないとか、初めてだとか、うっかりだっていうのは仕方ありません。
つまり、1回目は許されるのです。だから、二度と同じミスしないようにするには、なぜそのミスが起ったのか。それが起らないようにするためにはどうしたらいいのかを、やっぱり考えるべきだと思うんです。
Aさん ミスを繰り返さないために、何をすればいいですか?
岩瀬さん 基本的には、チェックすることです。たとえば何か漏れがあったら、次回は漏れがないようにチェックリストを作るとか。
あとは、他の人に見てもらうのも手です。あとは、時間を十分に確保するということだと思います。
Aさん 「再発防止」のチェックリストを作るのですね。
岩瀬さん あと、そうですね……。実は私、すごく物忘れが激しいんですよ。
Aさん そうなんですか、意外です!
岩瀬さん たとえば「明日、手続きがありますので、印鑑を持ってきてください」と言われても、覚えていないことが多いんです。前の晩に言われても覚えていないのです。
Aさん さすがにそれでは、仕事に支障をきたすのではないでしょうか?
岩瀬さん だから手を打つのです。秘書や担当者に「明日の朝7時30分にリマインドしてもらえますか?」とあらかじめ頼んでおきます。そうすると、7時30分にメールが届いたりメッセージが届いて、「印鑑持って出社する」ことを思い出します。外部のリマインド機能みたいなものです。
秘書がいない人でも、スマホのメモ帳に書いてアラーム設定したり、やれることはあるはずです。
Aさん 自分ひとりで解決しようとするのではなく、周囲の人やツールの力を借りるのですね。
岩瀬さん そうなんです。人というのは、誰もがみな欠点を持っています。その欠点、いわば弱点そのものが問題ではありません。
Aさん では何が問題なのでしょうか?
岩瀬さん 欠点があることを受け入れ、欠点を補うための努力をしないことが問題だと思うんですね。
Aさん 努力しないこと=許されないミスということでしょうか。
岩瀬さん あと、ただ、やっぱり1回の致命的なミスというのもNGですね。
Aさん そういったミスを挽回する方法ってあるのでしょうか?
岩瀬さん たとえば、新入社員時代に大寝坊してしまうと、寝坊キャラってイメージがつきまとってしまいます。「Aさんは大寝坊」というキャラを払拭するためには、相当な努力と時間が必要になると思います。たとえ100日間、連続時間どおり来ても払拭されないでしょう。
それでもなお、ミスを挽回するにはコツコツやるしかないんですけれど……。
Aさん ああ、やっぱりミスしたくない!って思いました。
岩瀬さん ミスを挽回するには、相手の期待を上回る仕事をするしかありません。たとえばいつも30分前に来て、それ1ヵ月ぐらいやったら、さすがにイメージ変わるじゃないですか。ミスを挽回するには、何倍も何度も、相手の期待を上回る何をやり続けなければいけないのです。
Aさん そうならないために、まずはスマホのアラーム設定を確認することから始めます!
※『入社1年目の教科書』の50のルールには、38「ミスをしたら、再発防止の仕組みを考えよ」という項目があります。
次回は、新入社員が気になる「ホウレンソウ(報告・連絡・相談の略)」について、みんなが不安や疑問に思っていることを岩瀬さんに質問します。お楽しみに。
(2018年3月28日更新予定)
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長。
1976年埼玉県生まれ、幼少期を英国で過ごす。1998年、東京大学法学部を卒業後、ボストン コンサルティング グループ等を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で修了(ベイカー・スカラー)。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。
世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。
著書は『入社1年目の教科書』『入社1年目の教科書 ワークブック』(ダイヤモンド社)、『ハーバードMBA留学記―資本主義の士官学校にて』(日経BP社)、『生命保険のカラクリ』『がん保険のカラクリ』(文春新書)、『ネットで生保を売ろう!』(文藝春秋)など多数。