新年度を迎えて1ヶ月が経ち、この春に社会人になった人や、新しい仕事を始めた人のなかには、慣れてきたと感じる人もいれば、「うまくいかないな」と悩んでいる人もいるのでは。仕事の人付き合いにおける「信頼されるコツ」をまとめた書籍『記憶に残る人になる』の著者である福島さんも、かつて同じ経験をしました。世界的ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンを経て、31歳でカード会社の営業になるも、当初は成績最下位に。今となって振り返ると、いくつもの「勘違い」をしていたそうです。
そこでこの記事では、福島さんに、新社会人や若手社会人がやりがちな「失敗」や「勘違い行動」についてお話しいただきました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

「あの人には挨拶しなくていい」って、本当に?
若手社員がやりがちな「失敗」のひとつに、「挨拶ができなくて怒られる」というのがあります。僕はこれを“優劣つけたがり病”と呼んでます。
なぜ挨拶なのに「優劣」なのか。それは、単に「挨拶を忘れた」という話ではなくて、「この人には挨拶しなくていいや」と、心の中で優劣をつけてしまっているのが原因だったりするからです。
お恥ずかしい話ですが、ホテルで若手スタッフとして働いていたときの僕自身、やってしまっていました。
ホテル内にはレストランがいくつもあって、展望フロアのレストランのシェフは“花形”的な存在で、一方で社員食堂のシェフはどこか“裏方”というような印象を持っていました。
もちろん職位としての違いはないんですが、どこかで無意識に「この人にはきちんと挨拶しよう」「この人には軽くでいいか」と、差をつけていたんですよね。
実際、社員食堂のシェフに対しては目も合わせず「お疲れさまでーす」みたいな、適当な挨拶をしていました。
「役職」や「立場」に対して挨拶していないか?
でもそんなある日、先輩から叱られました。
「もしあの人が展望レストランのシェフだったとしても、同じ態度で挨拶するの?」って。
そのとき、ハッとしました。
僕は「人」に向かって挨拶してるつもりで、「役職」や「立場」に対して挨拶していたんです。それじゃダメだと、強く怒られました。
それ以来、社内で出会うすべての人にちゃんと挨拶するようになりました。
すると、自然と声をかけてもらえるようになったり、情報を教えてもらえたりと、いい循環が生まれるようになったんです。
営業時代も同じでした。
社内の清掃員さんや警備員さんにも、毎回きちんと挨拶するよう心がけていました。『記憶に残る人になる』にも書きましたが、ゴミ箱の底に清掃員さんへの感謝のメッセージをこっそり仕込んだりもしていたくらいです。
誠実さは言葉ではなく、行動でしか伝えられないと思っているので、そういう“些細な挨拶や感謝”こそ大事にしていました。
挨拶に「コスパ」なんて求めてはいけない
最近ネットの記事で、「挨拶って意味あるんですか?」と若手社員に聞かれた上司の話を見ました。「挨拶して売上が上がるわけじゃないですよね?」って。
たしかに、直接的な関係はないかもしれません。でも、物事ってどこかでつながっていると思うんです。
直接の因果関係はなくても、挨拶がきっかけで話が弾んだ人から、情報が入ってきたり、困ったときに助けてもらえたりすることは、十分にあり得ます。
実際、ホテル時代にこんな人がいました。よくホテルのカフェラウンジを商談で使っていた自社の男性営業がいたんですが、その方は僕たちスタッフ一人ひとりに丁寧に挨拶してくれる方でした。
すると、僕らも「混んでいるけど、あの人のために席を空けてあげよう」と、ついサポートしたくなるんですよね。
いまは「コスパ重視」の風潮が強くなっていて、「すぐにプラスになること」しかやらない傾向があります。
でも、挨拶ってそういう“目先の利益”じゃなくて、“人間関係の土壌”を耕す行為なんです。
それに、挨拶してるかどうかって、意外と周りの人が見ています。
今は部下や後輩に強く注意できない時代ですが、気づいていないわけではありません。「あの人、挨拶しないよね」って思っているかもしれない。それが将来的な評価に響く可能性だってあります。
「挨拶だけで何が変わるの?」じゃなくて、「挨拶から何が生まれるか」を想像できる力。
そういう感性を、若いうちからぜひ育ててほしいなと思います。
(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんへのインタビュー記事です。)

「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となり、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書。