芸術や科学、ビジネスで活躍するクリエイティブな人々は、こうした本質を問う考え方を取り入れていることが多い。フェデラル・エクスプレス社の創業者であるフレッド・スミスは、自分が事業に成功した理由もその方法も貨物輸送業界で働く人々には本当の意味で理解されていないと言った。
スミスによると、成功したのはこのビジネスの本質を理解したからだという。本質とは安心感であって単に荷物を運ぶことではない。この本質を悟ったからこそ、彼の会社は、顧客が自分のパソコンから荷物の配送状況を追跡できるシステムをどこよりも早く提供することになった。
人間の思考は、形式化した従来の轍にたちまちはまってしまう。何かに行きづまったり、空回りしたりするとそうなりやすい。こまごました知覚の泥沼に囚われてしまう。チャールズ・ダーウィンは、ダニかカビかという分類の泥沼に拘泥する代わりに、「生命とは何か」を壮大なテーマとして掲げた。問題の本質そのものに触れることによって、互いの考え方を理解し合う余地が生まれる。それは自分の持っている前提を確かめ、さまざまな可能性を探す力になる。
大勢の人がプールに勢いよく飛び込んで、水面に大きな波紋を広げている様子を思い浮かべてほしい。プール全体で起こっていることを知る手がかりが波紋にあると想像しよう。
今、そのプールの隅に1匹のとても賢い虫が止まっているとする。不規則に乱れる波紋の様子から、その虫には誰がどこへ、いつ、どのように飛び込んだのかがわかるとしたらどうだろう。信じがたいことだと思うかもしれないが、それこそが独創的で常識にとらわれないアイデアを考え出そうとするとき、我々がやっていることに他ならない。人は皆、生まれつきクリエイティブだ。さあ、プールに飛び込もう!
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