すばらしい脳の機能
人間はさまざまな物体や外界の性質、本質、関わりの薄いアイデアや物事から、新しい何かをイメージし、作り出すことができる。このようなジャンプする連想を通して、異なるアイテムを脳の中で組み合わせ、新たなアイデアや発明を行っている。人類が発明を始めたのは、動物の骨と狩猟活動とを組み合わせ、骨で武器を作るところからだった。同じプロセスにより、長い年月を経て電球やテレビ、人工衛星、その他のテクノロジーが発明された。
このような脳の機能はきわめて自然な、生まれつき備わっている特性なので、人間はそれがどれほどすばらしいかに気づかない。コンセプトを混ぜ合わせる脳の機能を顕著に示しているのは、ごく普通のたとえ話を用いた表現だ。「彼らは経済的に墓穴を掘っている」と聞けば、たちまちその意味がわかる。しかし「墓穴を掘ること」と「投資」との間にはまったく関連性がない。墓と金銭を結びつける合理性も見当たらない。では、どうして我々にはその意味がわかるのだろうか?
人間の脳は、ある入力情報(墓を掘ること)と別の入力情報(投資)を苦もなく結びつけてしまう。だが、結びつくことによって得られた意味は、もともとの入力情報に含まれていたわけではない。2つの情報を組み合わせたことによって生まれたものだ。外部から情報が提供されなくても組み合わせによって構造が作られ、新たな意味が生まれた。どうやら人の脳はなんの苦労もなく異なった事物を統合し、間接的な連想や連関性の膨大な広がりを司っているらしい。アイデアが混ぜ合わされて生まれたアイデアや発想は、シンプルかつ直接的に意識のレベルにのぼってくる。
ロー・クリエイティビティ、人間が持っている生来の創造性とは、物事の本質を感じとることである。例に挙げた「墓堀り」の比喩でいえば、人間はその比喩の意味を無意識のうちに理解し、墓掘りと投資を結びつける。つまり人生を失うことと、金銭を失うこととの関係を理解している。