完璧主義者がうつにならないためには「自分をいたわる」といい

 春は新しい環境への期待と不安が混在する季節だ。

 ことに完璧主義の人は、不慣れな環境に置かれると頭から「こうあるべき」「ねばならない」と自分を追い詰めてしまう。自己批判を繰り返し抑うつ状態になるほか、失敗への不安を無意識に避けようと与えられた課題や仕事を先に延ばしてしまう。それがまた自己批判のタネになり、悪循環に陥ることが少なくない。

 従来、困難な状況下で肯定的な自分を維持できるかどうかは「自尊感情」の有無が大きいとされてきた。

 しかし近年は、自尊感情を守るための「先延ばし」や「他者非難」の弊害──人間関係への悪影響が指摘されている。この流れを受けて、注目されているのが「セルフコンパッション(SC)」、すなわち自分をいたわる能力だ。

 SCは悪い出来事に遭遇したときに、まず辛い気持ちを受け容れ、(1)自己批判せずに自分自身に愛情を注ぐ、(2)辛いことは自分だけに起こるのではなく、誰もが不完全な面があるという視点を持つ、(3)過去の経験から生まれる否定的な感情に流されず「今、直面している苦難や感情」を客観的に捉える、という三つの特性からなる。

 先月報告された研究では、オーストラリアの私立に通う中学~高校生(平均年齢14歳)541人と、一般の成人515人(年齢18~72歳、平均年齢25歳)に対し、完璧主義と抑うつ度、そしてSC力との関係を調査している。

 その結果、やはり完璧主義スコアの高さは抑うつ度の高さと強く関係していた。しかし一方でSC力が高い場合は、年齢に関係なく抑うつ度への影響が解消されることが示されたのだ。特に若者でその傾向が顕著だった。

 完璧主義そのものは悪いことではない。至らない自分を責めさいなむ面が強すぎると抑うつや不安、無力感に悩まされるが、理想の自分を目指す意志やワクワク感は前に進む原動力になる。

 だからこそ失敗をしたら、「親友」に接するように自分をいたわること。それがSCの秘訣だ。だいいち自分をそこまで非難せずとも他人が十分に批判してくれる。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)