生活困窮者自立支援法が施行される前年に活動を始めた伊藤さんは、「制度の狭間」にいる人たちを当初から意識していた。つまり、障害のある人であれば、就労継続支援A型やB型などの制度があり、一般の人には、ハローワークや人材バンクなどがある。ところが、障害の認定も受けていなければ、一般の人として就労することもできない「狭間の人」の存在は、ずっと置き去りにされてきた。

 また、中心会の施設では、それぞれの希望者の状況に応じた「体験就労」もできる仕組みをつくり、生活困窮者自立支援法の就労準備支援で期待されている「中間的就労」の場にもなっている。

「制度の狭間にいる人たち」を救え
支援の対象者を限定しないことが重要

「引きこもり」長期高齢化の実態、制度の狭間でもがく人々を救えるかユニバーサル就労支援について説明する伊藤早苗氏(右)と、高齢者施設所長の三浦正光氏(左)。神奈川県海老名市で(筆者撮影)

 伊藤さんの「対象者を限定しない」「制度の制約がない」ユニバーサル就労支援には、就労準備支援を行っていない自治体が半数以上あり、相談支援のノウハウがなく、民間との連携も弱い自治体が数多くある中で、口コミなどで知った行政の担当者から依頼や視察も来るようになった。

 具体的には、相談者の何ができるか、できないか、何がしたいか、したくないかなどの特性や背景を詳しく把握して、開拓した企業側にも理解してもらい、ともにサポートしながらマッチングさせていく。また、様々な機関や行政の連携先、受け入れてくれる企業のネットワークをつくり、自分が対象なのかどうなのかの情報も含め、選択肢を増やしていく。

「行政の枠組みではなく、何の制度にも乗っていないので、期限はなく、自由に柔軟に対応できるところが特徴です」

 伊藤さんは、それぞれの人の状況に寄り添った支援を1人で行ってきた。2016年度までの3年間に、180人から相談を受け、122人が各施設での掃除や食事準備、事務、お茶出しといった就労準備支援の実習を自由な時間設定で行い、38人が様々な業種に就労していった。

「相談者は、長い間、引きこもり状態にあった人や、就労ブランクが長い人、コミュニケーションが苦手な人など様々です。障害のボーダーラインと思われる人が多いような印象を受けます」