Vodafoneの逸材
ニック・ヒューズ

 このM-Pesa事業は、元々VodafoneがケニアにおいてSafaricomと共に共同開発した。そして、このM-Pesa事業を最初に発案し、動かし、計画にのせ、人々を説得して歩いたのが、当時Vodafone社のCSR部にいたニック・ヒューズである。

 彼は技術開発をするために資金を調達し、何度もCEOを説得し、事業の必要性を説いた。彼がいなければ、Vodafoneは新たにケニアで7万人の顧客を獲得することができなかった。

 Vodafoneにとって、ニック自身は完全な突然変異的な人材だった。確かに、彼は応用経済学のPhd、ロンドン・ビジネス・スクールのMBAを持ち、学歴や職歴は申し分ないエリートだ。だが、彼は一環して「サステナビリティ」に関して熱心に働く人材で、CSR部門で活躍する社内の変わり者であった。

 Vodafoneがユニークなのは、ここまで高学歴な人材を収益性の高い事業部門に投下せずに、サステナビリティ部門に配属したことである。これが「変わり者」を「社会イノベーター」へと昇華させた。

 彼は今まで話を聞いたことがなかったステークホルダーと積極的に話をし、今まで組んだことがない事業者とも話をし、積極的に外部のリソースを中に取り込んでいく。人を巻き込む力、0を1にする力を持った彼は、様々なステークホルダーと話をするうちに、一つの疑問を思いつく。

「なぜアフリカではお金のやりとりが簡単にできないんだ?それができればみんなビジネスができるのに」。この時点で、携帯が役立つとはまだ発想していなかっただろう。