◇寛容であたたかい国へ

 「注文をまちがえる料理店」に影響を受け、町田市で「注文をまちがえるカフェ」が開催されるなど、このプロジェクトは少しずつ、たしかな広がりを見せている。今後も日本国内や世界で、「注文をまちがえる料理店」を開催するつもりだ。

 とくに東京オリンピックが開催される2020年には、料理店をはじめ、もっと広がりをもった「老いや障がいに触れるテーマパーク」を開きたいと著者は考えている。「認知症」「LGBT(性的少数者)」「発達障害」など、耳にすることは多くても、その実態を知らない言葉は数多くある。そういった世界を楽しく、エンターテインメントとして触れることのできるテーマパークを作るのが目標だ。

 日本は「COOL JAPAN」という標語を掲げているが、これから日本が大切にしていくべき標語はむしろ、「WARM JAPAN」であると著者はいう。日本が寛容であたたかい国になるよう、これからもプロジェクトは進んでいく。

一読のすすめ

 高齢化によって社会的にも大きな問題となっている福祉のあり方、そのひとつの可能性が本書では示唆されている。人が人として生きるために必要なことはなにか、どうすればそれを楽しく支えていくことができるのか――そのヒントが随所に散りばめられている一冊である。ぜひ本書を通読して、このあたたかな空気を感じてみてほしい。

評点(5点満点)

総合3.8点(革新性4.0点、明瞭性4.0点、応用性3.5点)

著者情報

小国士朗 (おぐに・しろう)
「注文をまちがえる料理店」発起人、テレビ局ディレクター

 1979年生まれ。東北大学卒業後、2003年に某テレビ局に入局。2013年に心室頻拍を発症。テレビ番組を作るのが本当に大好きで相当なエネルギーを注いできたが、それを諦めなければならない事態になり、一時はかなり悩み落ち込む。

 しかし、「テレビ局の持っている価値をしゃぶりつくして、社会に還元する」というミッションのもと、数々のプロジェクトを立ち上げ、いつしか局内でもテレビ番組をまったく作らない、おかしなディレクターとして認識されるようになり、ついには専門の部署までできることに。「注文をまちがえる料理店」はとある取材時に思いついたことを形にしたもの。好物はハンバーグとカレー。

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