澤野弘之さん 画像提供:扶桑社
名シーンや緊迫する場面を引き立てる、ドラマBGMの数々。それらはどのように作られているのだろうか。ドラマ『医龍』の音楽を手掛けた作曲家本人が、その舞台裏を明かす。※本稿は、作曲家の澤野弘之『錯覚の音』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
ドラマのBGMは
ざっくり発注から生まれた
当時の僕のドラマ劇伴(編集部注/BGMのこと)制作がどのような流れで進んでいたのか、特にアニメの制作スタイルとの違いから話を進めたい。アニメの劇伴制作は、多くの場合、音響監督(注1)などが作成する、いわゆる「メニュー表」に基づいて楽曲を作っていくスタイルが主流だ。
そこには「M-1:日常、ほのぼの」「M-2:戦闘シーン、緊迫感」といったように、具体的なシーンや感情の指示が書かれている。
しかし、僕がこれから話すドラマの制作ケースが業界の標準的な流れかというと、それは断言できない。なぜなら、僕がキャリアの初期に仕事をともにした1人の選曲家が、少しユニークな人物だったからだ。他の選曲家と仕事をする際には、アニメと同様にある程度のメニュー表を用意してくれる人もいる。だが、僕のキャリア初期、特にその特定の選曲家との仕事においては、全く異なるアプローチが取られていた。
僕の初期のドラマ作品は、ほとんどこの人物と一緒に手掛けていた。彼のやり方は、事前にメニュー表を一切用意しないというものだった。
(注1)主にアニメやゲームで、台詞や効果音、BGM(劇伴音楽)など映像作品内で使われる音響要素全般を統括する。







