なぜ、あなたの会社は利益を生み出せないのか?それは、今までの会計の公式が間違っていたから。これまでの会計原則である「売上ー経費=利益」に従っていてはダメ。もっと儲かる会社にしたいのなら、「売上-利益=経費」へと頭を切り替えろー。世の経営者たちにそう訴えかけるのが『PROFIT FIRST お金を増やす技術』(マイク・ミカロウィッツ著、近藤 学訳、ダイヤモンド社、3月14日配本)です。著者のマイク・ミカロウィッツは米国人の起業家で、彼自身が破産寸前にまで追い込まれたことがきっかけで、この「プロフィットファースト(利益が第一)」は生まれました。一言でいえば「借金を減らし、キャッシュリッチな会社に変わるための資金管理法」です。本連載では、多くの経営者が経営改善に成功している実証済のシステムである「プロフィットファースト」の基本を、7回にわたって紹介します。

現金を管理するためのシンプルな仕組みが必要

 いついかなるときでも、一番大切なのは現金です。

 それはビジネスにとっての血液のようなもの。あなたは現金を持っていますか?もし持っていなければトラブルに巻き込まれるでしょうし、持っていればあなたは持ちこたえられます。

 会計原則は、現金だけを管理するように作られているわけではありません。ビジネスのあらゆる要素を理解するためのシステムなのです。そのための3つの重要な財務諸表として、損益計算書キャッシュフロー計算書貸借対照表があります。

 こうした財務諸表について理解しておく必要があることは、間違いありません。

 あるいは、それができる会計士か経理担当者を雇ってもいいでしょう。なぜなら、こうした財務諸表は会社の全体像をあなたに見せてくれる、強力かつ非常に有用なツールだからです。

 しかし、会計原則のエッセンスである「売上ー費用=利益」という公式には恐るべき欠陥があります。それはモンスターを生み出す公式といえます。

 利益の出るビジネスを上手く経営していくためには、私たちの現金を管理するためのシンプルなシステムが必要です。数秒で理解することができ、会計士の助けも必要としない、ミスター・スポック(訳注:映画「スター・トレック」シリーズに登場する、感情を完全に制御することができるバルカン星人と地球人のハーフ)のためではなく、人間のためにデザインされたシステムが必要なのです。

 自分のビジネスの健康状態に関する真実を即座に知ることのできるシステム、一目でビジネスを健康な状態にするのに何が必要なのか、あるいは健康維持のために何をする必要があるのかを知ることができるシステム。そういうシステムが私たちには必要なのです。

 実際にいくらまで使うことができ、いくら貯める必要があるのかを知ることができるシステム。私たちに変わることを要求せず、直感的に使えるシステム。それこそが、プロフィットファーストのシステムなのです。

人間のためにデザインされたプロフィットファースト

「スタートレック」のミスター・スポックは、ことあるごとにカーク船長の目を見てこう言います。
「それは、とても非論理的です」

 あなたと同じく、カーク船長は人間です。そして人間は、非論理的な生き物です。私たちは、猿の脳を持つ感情的な野獣なのです。私たちはキラキラと輝いているものが好きで、無料のピザが目の前にあれば満腹になるまで食べ、安売りしているというだけで必要もないキャットフードを買ってしまうのです。

 もしもあなたが論理だけを優先するバルカン星人のミスター・スポックなら、あなたの会社の数字を正しく理解するために必要なすべての会計の作法に従うこともできるでしょう。毎週、自分の損益計算書について学びを深め、それを貸借対照表と結びつけ、キャッシュフローを分析する。あなたがこれらをすべて行えば、常に正確な利益を知ることができます。

 でも、あなたはそんなことはしないでしょう。私自身、そんなことはできません。実際のところ、私はいまだに、これらの書類を上手く読みこなすことができません。

 私は人間だし、あなたもそうです。

 あなたは人間として、習慣や癖のようなものを持っているはず。

 たとえば、自分の預金残高がどうなっているのかを見るために、数日おきに口座を確認したり、あるいは1日に何度か確認したりしませんか?

 また、そうして確認した残高に基づいて、直感的な決断を下しているはずです。口座の預金残高が多ければ安心するし、ビジネスが上手く回っていると思ったあなたはこう考えるかもしれません。

「よし、クライアントにマルガリータでもおごろう。オフィスにテーブル式のサッカーゲームでも置こうか」

 でも、もし預金がなければパニックに陥ります。

「すぐに督促の電話をしなければならない。この前買ったサッカーゲームは売却しよう。自動販売機も撤去だ。椅子も全部売ってしまおう、座りっぱなしで仕事をするのは身体に良くないからな。ああ、誰かマルガリータをおごってくれないだろうか……」

 こうした普通の人間らしい振る舞いは、意図しなくてもビジネスを不安定な状態に引き込んでしまいます。

 だが、プロフィットファーストを使えば、あなたは何も変わる必要がないのです。これは重要なポイントです。あなたには、これまで何度も変化する機会がありました。財務諸表を読み、買掛金と売掛金をバランスさせ、予算通りに進んでいるかを確認し、すべての財務指標は適正かを確認する―ー。

 確かにこうしたことをすべて実行できれば、常に利益がどれほどのものかを把握することもできたでしょう。しかし、多くの起業家は預金口座を確認して、直感で判断する方法に戻っていくのです。一体、これはなぜでしょうか?

 チャールズ・デュヒッグは、その著書、『習慣の力』(講談社刊)という本の中で、人間はその本質として、ストレスを感じたときには、既に確立された癖に立ち戻るものだと説明しています。確立された癖はなかなか直らないのです。それならば、癖を矯正しようとするのではなく、その癖に合わせたシステムを用いる方が良くはありませんか?

 プロフィットファーストはあなたが危険な状態にあり、より複雑な会計の問題に取り組む必要があることを教えてくれます。そしてある時点であなたのキャッシュがどこにあるのかを知らせてくれるのです。

 あなたは、自社の利益性、納税用に必要な資金、いくら給料をもらえるのか、そして事業を運営するために必要な資金を、それにより知ることができるようになります。

金食いモンスターを金のなる木に変える方法

 フランケンシュタインの最後は、あらゆる本の中でも最も心温まるハッピーエンドです。

 フランケンシュタイン博士と彼が生み出したモンスターは互いの違いを認めて親友になります。そして一緒に事業を始め、それは多くの人に愛され繁栄を極めるアイスクリームブランド、フランク&シュタインズになるのです。涙なくしては語れないハッピーエンド……というのはもちろん冗談です。

 もしあなたがその本を読んだことがあればご存じの通り、フランケンシュタイン博士が生み出したモンスターは、すべてを破壊してしまいます。彼の妻、家族、将来への希望。そこで博士は復讐のため、己の創造物を殺すことになります。モンスターを倒そうとして、フランケンシュタイン博士はボロボロになって最期を遂げます。モンスターは彼の後ろに静かに佇んでいる。あらゆる起業家にとって、この博士の姿は自分を映す鏡になり得るものでしょう。

 モンスターとなった事業は結婚生活を壊し、家族をばらばらにし、時には素晴らしい人生を送るための希望を完膚なきまでに打ち砕きます。私たちが作り上げたビジネスという名の奇跡は、最後は計り知れない苦しみを生み出します。こうなると、フランケンシュタイン博士が自身のモンスターに抱いていた憎悪と同じものを、起業家であるあなたは自分のビジネスに対して抱くようになります。

 しかし、あなたはハッピーエンドを迎えることができます。あなたのビジネスは、あなたの人生をコントロールするモンスターに見える一方で、非常にパワフルでもあります。

 あなたの会社の年商は5万ドル、50万ドル、500万ドルあるいは5000万ドル以上あるかもしれませんが、あなたのビジネスは利益を生み出すマシーンになる可能性があるのです。

 モンスターの力を忘れてはいけません。モンスターを指揮しコントロールする方法を理解する必要があるのです。あなたがプロフィットファーストというシンプルなシステムを学んだなら、あなたのビジネスは、もはやモンスターではなく金のなる木となることでしょう。

 これから私があなたと一緒に行いたいことは、あなたのビジネスから今すぐに利益が出るようにすることです。ビジネスの大きさとか、これまでどれだけ長い間自転車操業のパニック状態を続けてきたとか、そんなことは関係ありません。

 これから先は、永遠に利益は残り物ではなくなるのです。利益を最初に食べるときが来たのです。

 あなたの財務を立て直す唯一の方法は、それと向き合うことであり、無視することはできません。他の人に助けてもらうこともできないのです。あなた自身が数字に責任を持たなければならないのです。

[著者]
マイク・ミカロウィッツ(Mike Michalowicz)
米国人のアントレプレナー。2社の1億円超企業を創業し売却。また、プロフィットファーストプロフェッショナルズの共同創業者として、同メソッドを伝える会計士、コーチを組織化する。元ウォールストリートジャーナルのコラムニストで講演家としても著名。TEDxなどでビジネスや起業家精神についてのスピーチを行っている。
他の著書に、『THE PUMPUKIN PLAN』(日本未完)、『トイレットペーパーの起業家』等がある。
[訳者]
近藤 学(こんどう・まなぶ)
日本人初のプロフィットファーストプロフェッショナル。
京都府で税理士事務所を開業。ネットベンチャー企業のCFOとして創業に参加。
中小企業の家庭に育ち両親の資金繰りの苦労を目の当たりにしてきた経験をもとに、自らキャッシュフロー改善のソフトウエアを開発し、現在約150名の税理士等に会員制サービス(こがねむしクラブ)を通して提供している。
訳書に『あなたの中の起業家を呼び起こせ』(マイケル・E・ガーバー著、エレファントパブリッシング)。著書に『一番楽しい!会計の本』(ダイヤモンド社)、『「儲からない」と嘆く前に読む会計の本』(大和書房)などがある。