人は誰でも風邪をひく。しかし、いつもピンピンしている人がいる。彼らには「早期発見・即対処」という共通点がある。風邪をひきそうになっても悪化させないから、周囲から「風邪をひいているように見えない」のだ。では、彼らはいつ、何をしているのか?

本記事では、現役の内科医、救急救命医、薬剤師などの知見と医療統計データ、150近くの最新の医学研究論文や文献を総動員し、「医学的に正しい風邪対策」を紹介する裴英洙氏の話題の新刊『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33』から、内容の一部を特別公開する。(構成:今野良介)

ほとんどの人が「風邪をひく前の行動」を振り返らない

あるビジネスパーソンに、こんな相談を受けたことがあります。

ビ:「私、ほんとによく風邪をひくんです。しかも、毎回同じパターンなんです」
私:「同じパターンって、どんなパターンですか?」
ビ:「鼻水が出てから、のどが痛くなって、熱が出ます」
私:「そうですか。風邪をひく前にしていたことって、どんなことですか?」
ビ:「……え? いや、それは考えたことなかったです」

よく風邪をひく人は、自分の「症状のパターン」は覚えています。でも、「風邪をひく前にどんな行動をしたか?」を認識している人は、ほぼいません。

風邪は、常に生活習慣の延長線上にあります。

睡眠不足が続き、疲れが溜まっているとき。
残業が増え、食事を抜きがちになっているとき。
出張で気温差の激しい地域に行ったとき。
薄着でうたた寝したとき。
せきをしている人と一緒に長時間会議したとき。
連日の接待で飲酒量が増え、胃腸が弱ったとき……。

振り返ってみれば、誰にでも「そういえば、こんなときに風邪をひきやすいかも」という、風邪の前行程のパターンがあるはずです。

その前行程の最初のほうに、風邪の「超初期症状」が潜んでいる可能性が高いのです。

超初期症状……『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?』の中で著者が提唱している概念。鼻水・のど・せきなどの明らかな風邪の症状が出る前の、「もうすぐ風邪をひきそうだ」という身体からのシグナルを指す。

ベッドの中で超初期症状を特定せよ!

そこで私は、風邪をひく直前1週間を見える化する「風邪ログ」を活用しています。風邪をひかなくなるための最初のステップは、「風邪をひいたときの最初の違和感は何だったか?」と問いかけて、超初期症状を認識することです。

方法は簡単で、次の3つの観点で、おおよそ1週間を振り返るだけです。

(1)どこで、何をしたか?
(2)どんなリスクがあったか?
(3)どんな症状があったか?

風邪をひいて、ベッドの中で寝ている時間を使ってできます。

次の図は、私が数年前に風邪をひいて寝込んでいたとき、スマートフォンのメモ機能を使って記録した6日間の風邪ログです。もっと簡略化しても構いません。

風邪をひかない人がやっている「振り返る」技術

ここから、私は次のように分析しました。

・11日の青森出張の間のどこかで、ウイルスが侵入した
・12日の「のどに膜が張ったような感覚」が超初期症状だった可能性がある
・12日の段階で、13日と14日のスケジュールを調整しておくべきだった

これ以降、「のどに膜が張ったような感覚」があると、私は生活を風邪モードに切り替え、本書で紹介した対策を実行しながら、仕事を休まず早期回復できるようになりました。

めったに風邪をひかないからこそ、ひいた時の風邪ログは貴重な資料になります。たとえば、5回風邪をひいた中で、3回の超初期症状が「食べ物の味が変わった」であれば、次に食べ物の味が変わったとき60%の確率で「風邪のひき始めだ」と判断できます。

そして、その瞬間からその後のスケジュールの調整などに移行すれば、パフォーマンスの低下を最小限にとどめることができるのです。

風邪をひかない人がやっている「振り返る」技術自分の「風邪をひくパターン」を知っておこう

『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?』では、このほか、日常生活の中で風邪リスクを激減させる具体策を詳しく紹介しています。

仕事を休めないビジネスパーソンはもちろん、結婚式や旅行など重要なイベントを控えた方、受験生やその家族、妊娠中の方など、絶対に風邪をひけない時期に、ぜひ本書の内容を実践し、肉眼で見えない風邪ウイルスと戦う正しい方法を身につけてください。

(参考記事)
『トイレの「ハンドドライヤー」を使ってはいけない』