人は誰でも風邪をひく。しかし、いつもピンピンしている人がいる。彼らには「早期発見・即対処」という共通点がある。風邪をひきそうになっても悪化させないから、周囲から「風邪をひいているように見えない」のだ。では、彼らはいつ、何をしているのか?
本記事では、現役の内科医、救急救命医、薬剤師などの知見と医療統計データ、150近くの最新の医学研究論文や文献を総動員し、「医学的に正しい風邪対策」を紹介する裴英洙氏の新刊『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33』から、内容の一部を特別公開する。(構成:今野良介)
1回のくしゃみで10万のウイルス
風邪のウイルスは非常に小さく、決して肉眼でとらえることはできません。一般的なウイルスの大きさは1~5マイクロメートル。インフルエンザウイルスはさらに小さく、100ナノメートルほどです。
肉眼で見えないからこそ、ウイルスが集まりやすい場所を知り、できる限り近づかないことが、風邪予防につながります。
風邪ウイルスの増殖の最適温度は33~35℃。24~37℃の環境下で、平均で2時間程度は生存するとされています。また、インフルエンザの患者によって放出されるウイルス量は、1回のせきで約5万、1回のくしゃみで約10万と言われています。
風邪は「接触感染」と
「飛沫感染」でうつる
風邪を含む感染症が人間に感染する経路には、大きく3つあります。
(1)接触感染
(2)飛沫感染
(3)空気感染(飛沫核感染)
風邪の感染経路は、接触感染と飛沫感染がメインです。
接触感染とは、皮膚や粘膜同士の接触、物体の表面を介しての間接的な接触によって病原体が付着し、感染する経路です。
飛沫感染は、病原体を含んだ患者のせきやくしゃみなどで飛散した体液の粒子を吸い込んだりして、他人の粘膜に付着することで感染する経路です。粒子の大きさが直径5マイクロメートルより大きく落下速度が速いため、罹患者の近くにいる人が感染しやすくなります。飛沫感染は、インフルエンザの主要な感染経路と言われます。
空気感染は、飛沫感染と同じく患者のせきやくしゃみなどで感染しますが、5マイクロメートル以下の粒子で感染するため、ウイルスの落下速度が遅く、長距離をフワフワと移動します。はしかや水ぼうそう、結核などが空気感染の代表例です。