本社のエラい人たちは
見て見ぬフリ

 筆者の友人も、年度更新で役員手当を一方的に減額されたという。

 明らかにおかしな支社長なのだが、彼の暴走を止めるすべはない。支社の役員会で決めたことでも支社長には拒否権があるからだ。私の友人をはじめ、いくら役員が支社長のやり方に意見しても、全く耳を貸さず、やりたいようにしてしまう。

 その支社長は、ずっと事務方一筋。丁寧で一分の隙もないような完璧な仕事をすることで有名だったという。性格的には、それほどクセがあるわけでもない。だが、ふたを開けてみると上記のようなことばかりで、社員は辟易している。オーストラリア本社の役員に不満を述べた者もいたようだが、本社が動く気配はない。

 その支社長が来てからこれまで、将来有望な若手や人望厚い幹部を含めて、もう10人以上辞めている。私の友人も転職を考え始めたという。また、入れ替わりで昇格させる者も、新しく採用した者も、イエスマンばかりだ。

 この組織の人事制度は明らかにおかしい。現場にはいない本社のトップが支社長を決め、その失敗のしわ寄せを食うのは、支社の社員たちだ。本来ならば360度評価を行うべきだが、その仕組みもない。せいぜい、支社の役員たちが個人的に知っている本社のエラい人たちに愚痴を言うのが関の山だ。しかし、そういったインフォーマルな申し立てを正式に議論してくれる人は、本社にはいない。みんな火中の栗など拾いたくないからだ。

 かくして、支社に勤める人々は黙って耐え忍ぶか、辞めるかの二択しかなくなる。そして支社長のやり方の間違いを指摘するような優秀な人物ほど辞めていき、後に残るのはイエスマンばかりになり、組織は官僚化していく。これは組織の首を絞めているのと同じことだ。

 事実、支社の業績は落ち始めている。その元凶は支社長なのだが、支社長は何か不祥事を起こしたわけではない。ただ経営者としての資質に欠けているだけだ。それが組織のゆるやかな死を招く。