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はじめて部下を持つことになった時、「いい上司になろう」と、きっと誰もが思うことでしょう。ところが、その決意は時間が経過するにつれて、次第に揺らいでいくかもしれません。そして、部下と仕事を進めていくなかで、「いい上司」とは、どんな上司なのだろうか、と頭を悩ます日がやってきます。
「いい上司」とは、いったいどんな上司なのでしょうか?
長年秘書を務めていると、ボスの本質を見抜く才能が備わると言われます。
「いい人は、いい人で終わってしまう」
「いい人が、必ずしも、仕事ができる人ではない」
こう微笑みながら言うのは、ベテラン秘書のAさん。
人あたりがよく、人懐っこい笑顔のなかに、凛とした姿勢や冷静な態度が見受けられ、ベテラン秘書の風格を漂わせています。その微笑みの下には、どんな思いが隠されているのでしょうか?
Aさんの元上司について、語ってもらいました。
秘書の仕事までこなす社長は
本当に“優しい社長”なのか
Aさんの元上司は、3万人の従業員を有する企業の代表取締役社長(以下、B社長)です。B社長は、多忙な時以外は、ホテルや飛行機の手配を自分でおこないます。そして、B社長は、自慢げな表情で、社長秘書にこう言うのです。
「本来なら、出張の手配は○○さん(社長秘書)の仕事だけど、ボクがやっておくよ」
この話を聞いて、「忙しいのに、出張の手配までしてくれるなんて、なんて優しい社長なのだろう」と思いますか? それとも、「それは秘書にまかせて、会社のために、社長としてするべき仕事に集中してほしい」と思うでしょうか?
きっと、多くの人が後者のように思うことでしょう。「社長本来の仕事に注力してもらいたい」「枝葉ばかり見ないで、森を見て仕事をしてほしい」「もっと部下を信頼してほしい」「細かい仕事まで抱え込まずに、部下に任せてほしい」という声が聞こえてきそうですよね。