Cさんの財布は、妻のブランドバッグのおまけにつけてもらったものだ。Cさんには、相当くたびれたその財布からお金を出すときに、無意識に財布を隠す習慣がある。その癖に気づいたときは本当に情けなかった。財布を出すのが恥ずかしいのは財布の外見のせいばかりではない。クレジットカードもなく、診察券が数枚といつも小銭しか入っていない財布を、とても恥ずかしくて同僚にも見せられないからだ。
恐妻の財布チェックに怯える
ファッション系商社課長Cさん(42歳)
自由にお金をつかえた独身時代から一転
妻の財布チェックが厳しい
Cさんは、15年前高校の同級生と結婚した。Cさんの実家は、デザイナーズブランドの下請けの縫製工場を経営していた。工場兼自宅では、いつもおばさんたちのミシンを使う音が響いていた。Cさんがファッション系の商社に入社したのも、そんな環境のせいかもしれない。
裕福ではなかったが、子供の頃から何不自由なく育てられた。景気の浮き沈みはあったもののお金の苦労を知らずに育ったCさんにとって人並みの生活。それが当たり前だった。
Cさんの妻は短大を卒業して、メーカーの事務をしながら実家の家計を支えていた。給料は家計簿をつけてすべて管理する。結婚前はしっかり者の妻を頼もしくさえ思っていた。
「この人なら、ルーズな自分をしっかり支えてくれそうだ。貯金もできそうだ」。その思いが結婚を決意させた。そしてCさんの妻は結婚を機会に会社を辞め家庭に入った。
独身時代のCさんは、タバコを1日1箱と朝に缶コーヒーを1本。それとペットボトルのドリンクを1日2、3本飲んでいた。昼食は500円の弁当のときもあれば、オフィスの近くのラーメン屋で1000円近く遣うこともあった。それさえ意識などしていなかった。