「ベンツ」の筆頭株主が吉利に、中国マネーの不穏な動き2017年4月の上海モーターショーでメルセデス・ベンツは新型Sクラスをワールドプレミアダイムラーは北京に展開する工場でEクラスを生産している Photo:Mercedes-Benz

吉利がダイムラーの筆頭株主に
昨年まではクウェート投資庁

 中国最大の独立系(非国営)自動車グループ、浙江吉利控股集団(ジーリー・オートモーティブ・ホールディング・グループ=以下、吉利)は2月、「ドイツのダイムラーAGが発行する株式の9.96%を取得した」と発表した。この結果、吉利はダイムラーの筆頭株主になった。

 一方、ダイムラーは「吉利会長の李書福(リ・シューフー)氏が長期的視野から株主に加わったことを喜ばしく思う」という声明を発表している。中国企業が世界で最も歴史と知名度のある自動車メーカーの筆頭株主になった──これは、何を意味しているのだろうか。

 今回、吉利が取得したダイムラー株は“株式市場に出回っている株”を“通常の手続き”によって買い集めたものである。かつて吉利はダイムラーへの資本参加を打診したが、そのときはダイムラー側が断っている。しかし吉利はダイムラーへの資本参加を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていた。

 吉利がダイムラー株の取得に使った資金は総額で90億ドル(約9600億円)といわれている。これが吉利の手持ち資金なのか、それともバックに控える銀行団の資金なのか、中国政府なのかは明らかになっていない。同時に、吉利が取得したダイムラー株がすべて個人投資家の所有だったのか、それとも機関投資家から買い取ったものなのかも明らかにされていない。