マレーシアのプロトンまで
中国新興企業の「買収熱」
マレーシアの自動車メーカー、プロトン(プルサハアン・オトモビル・ナシオナル)が買収される展開になった。同社の持ち株会社、プロトン・ホールディングスの株式49.9%を取得するのは、中国の吉利(ジーリー)ホールディングス(以下、吉利HD)である。
吉利グループの統括会社、浙江省吉利控股(ピンイン)集団が5月にこのプランを発表し、同時にプロトンが所有する英・ロータス・カーズの株式51%も譲り受ける。ボルボ・カーズの買収で一躍有名になった中国の新興自動車メーカーは、大衆車メーカーのプロトンとスポーツカーメーカーのロータスを同時に傘下に持つことになり、一気に存在感が大きくなった。
プロトンはもともと国民車メーカーとしてマハティール政権下で1983年に設立された。主体となったのはマレーシア重工業公社であり、国民車を設計・生産する国策会社だった。このプロジェクトに協力したのは三菱商事と三菱自動車で、プロトン最初の量産車、サガは三菱ミラージュの技術を流用した乗用車だった。プロトンは2000年代初頭、マレーシアの国内シェアで半数以上を持つほどの勢力を誇っていた。
しかし、三菱との関係はプロトンのプライドの高さによって次第にぎくしゃくしていった。プロトンは三菱に「技術移転のスピード」を求めたが、三菱側は「自動車作りの基礎から段階を踏む必要がある」と判断したため、当時のマハティール首相は三菱以外のパートナーを探す行動に出るなど、プロトンの開発・製造現場に混乱をもたらした。結局、三菱自動車はプロトンとの資本提携関係を解消(04年)する。
一方、マレーシア政府はプロトンに次ぐ第2国民車メーカーとして1993年にプロドゥアを設立。同社はダイハツの全面的な協力を得て生産モデルを拡充、2006年にはマレーシア国内販売でプロトンを抜く結果となった。