「それは恐らく早くても2〜3年後のこと。しかもうち単独で実現はできないかもしれない。でもそれを待っているのではなく、どっかがやるから参加しようではなく、自分たちが主語となっていくイニシアチブを作りたいわけです」

 専門家の間でよく指摘されるのは、巨額流出事件を経てもなお、仮想通貨の基盤技術となるブロックチェーン自体に直接的な脆弱性が見つかったわけではない、ということだ。その上で、マネックスの証券取引サービスのみならず、世界中の証券取引がブロックチェーン上で行えるとの未来像や、世界的な証券会社のコンソーシアム(共同事業体)のような構想も念頭に置いていると話した。その実現には新参者が絶えず流転する世界の仮想通貨業界にあって、少しでも早く参入せねばとの焦りにも近い思いがあったかもしれない。

 そんな長期的な展望のみならず、マネックスの収益面の焦りも大きいとみられている。ネット証券大手5社の中で株式売買仲介のシェアが最も小さく、仮想通貨交換業への参入に関しては、自社で設立したクリプトバンクの登録申請の認可に時間がかかる見通しだった。コインチェックはそもそも、ヤフーや大和証券などの大手が訴訟リスクなどを読みきれず買収を断念した経緯がある。

 17年末時点でマネックスは1000億円近い現金資産を持つとはいえ、今回の36億円という買収額の中には「アーンアウト条項」と称される契約によって追加の買収費用が発生する可能性が高く、これまでのコインチェックの高収益が持続できるかにも疑問符がつく。

 コインチェック買収の報道や発表に対し、株式市場ではマネックス株が急騰劇を演じるなど、高い収益性に対する市場の期待は大きい。それだけ大きな要求に答えられないと、しっぺ返しを食らうのも必至だ。

 ゴールドマン・サックス時代にトレーダーとして巨額の利益を会社にもたらし、史上最年少でゼネラル・パートナーに上り詰めた松本社長。稀代の投資家の嗅覚でつかんだコインチェックの行く末には世界中から関心が集まっているが、金融庁は慎重に判断を下していく姿勢だけに、まずは「2ヵ月」と掲げた交換業者の登録とサービス再開が実際になされるかが今後の注目ポイントとなる。