週刊ダイヤモンド3月17日号の第二特集は「金融庁本腰で淘汰必死 揺れる仮想通貨取引所」。2014年のマウントゴックス事件に続き、今年1月に国内大手取引所のコインチェックでも不正流出が起きたことで、仮想通貨に対する不信が再燃している。3月8日、システム面などに不備のある取引所に対して金融庁が一斉に行政処分を下し、業界再編が予想される今、仮想通貨はどんな未来を迎えるのか。著書『アフター・ビットコイン』にて、ビットコインの影の部分を指摘した中島真志・麗澤大学教授に話を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)

――この1年、投資家からの仮想通貨への期待が爆発的に高まり、2017年は “仮想通貨元年”とまで呼ばれました。その熱狂ぶりをどのように感じていましたか。

ビットコインは馬脚を現す一方で「ブロックチェーン2.0」が花開く中島真志(なかじま・まさし)/1958年生まれ。81年、一橋大学法学部卒業後、日本銀行入行。調査統計局、金融研究所、国際局、金融機構局、国際決済銀行(BIS)などを経て、現職。ビットコインの影の部分について言及した著書『アフター・ビットコイン』(新潮社)が話題を呼んでいる。 Photo by Takahiro Tanoue

 昨年も、仮想通貨に関する悪いニュースがなかったわけではありません。中国における取引所の閉鎖や、韓国での規制の厳格化が報道され、それに伴い、仮想通貨の価格も一時期は下がりました。

 ただ、そうした出来事を飲み込んで、価格は上がっていきました。その要因として、いまだ全取引の3~4割ほどを占める日本人の存在があります。

 日本では、「夢の通貨」や「未来の通貨」、「これが世界を変えるんだ」といったバラ色のイメージが先行して、多くの方が仮想通貨を買い漁った、という印象を持っています。

 特に、昨年12月には仮想通貨の代表格である「ビットコイン」の価格が年初の20倍となりました。これは、事情も知らずただ儲かるものだと思った日本人の投資初心者が、どっと押し寄せたからです。

 このように、初心者が殺到してしまう相場は危ないと思っていたところ、案の定と言いますか、年明け以降にビットコインの価格は半値以下に下がりました。もっと一方的に落ちるかと思いきや、足元では意外と持ち直していますね。

 今年に入り、大手取引所のコインチェックがセキュリティー面の不備により仮想通貨の不正流出を招きました。こうした出来事をきっかけに、今年は、昨年までは目をつぶられていた仮想通貨の負の側面に焦点が当たり、仮想通貨の真実がだんだんわかってくる一年になるでしょう。

――仮想通貨の真実ですか。一口に仮想通貨といっても、投資や技術などいくつか側面があり、これらの要素を分解した上で未来予想をしてもらいたいのですが、まず投資という側面から、1年後に価格はどうなると思いますか。