当局がグリーに重大な関心<br />正念場迎えるソーシャルゲーム急成長するグリー。田中良和社長の打開策は有効に機能するのか、注目される
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 急成長しているソーシャルゲーム。そのビジネスモデルを揺るがしかねない事態が起きている。

 ある政府関係者によれば最大手グリーの摘発に向けた検討が始まったもようで、「4~5月が山場だ」というのだ。

 ソーシャルゲームは今どき珍しく営業利益率約50%という国内屈指の収益性を生み、グリー創業からわずか7年で市場規模は2000億円を超える成長を遂げた。その根幹をなしているのが「アイテム課金」というモデルである。

 通常、ゲーム自体は無料ながらも、ゲームを進める上で必要となるアイテムに課金される。

 アイテム次第でゲームの攻略は有利になるので、利用者の熱は増す。しかも、主流となるゲームでは強力なアイテムを得るためにくじ引きの要素が取り入れられており、ついついカネをつぎ込んでしまう仕組みになっている。

 ゲームジャーナリストの新清士氏は「月10万円近く使うような、会員全体の3%に満たない高額利用者が支えている」と言う。

 会社側にとってみればデジタルアイテムを制作する原価はほぼなく、その出現確率も操作できるために高収益につながるのだ。

 しかし、人気が高まれば高まるほど問題は深刻化していく。

 希少性の高いアイテムがネットオークションを通じて実際に取引されるようになった。数十万円の高値がつくアイテムもあるほどで、ゲームのバグを突いた複製で荒稼ぎする者も出ている。

 もともと携帯端末を用いて無料でゲームが始められ、簡単に決済ができることで会員数を伸ばしてきたために、未成年者の高額利用の問題も引き起こしている。

 各地の消費生活センターには、子どもが多額のカネを使ってしまい困り果てた親からの相談が相次いでいる。「100万円を使う例もよくある」(東京都関係者)ほどだ。

 高まる規制リスクを見越した市場の動きも出ている。大和証券キャピタル・マーケッツは「業績拡大は続くものの、行政指導がなされるリスク度合いが増している」などとしてグリーの投資判断を1から3へと2段階引き下げた。

 こうした状況にようやくグリーも社内委員会を立ち上げ、対策に乗り出した。未成年者の利用を年齢によって月5000~1万円に制限すると発表。大人でも一定額に達した際には通知したり、ネット取引を監視したりすることにしている。

 しかし、業界一丸とならなければ効果は薄い。規制の緩いゲームに流れるだけだからだ。のんびりとして問題が大きくなれば、政府の介入を招く口実を与え、成長産業が一気にしぼみかねない。

 射幸心をあおるゲームシステムやゲーム内のアイテムの現金取引、そして未成年者の高額利用の課題をどう解決するのか。

 自主ガイドラインを定めるなど、早急に業界としての対策を講じるべきである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

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