企業の業績を推しはかる手法には、収益性分析やキャッシュフロー分析、生産性分析などがある。これらのうち、企業外部の第三者が生産性分析を行うことが、2011年以降、困難になってしまった。
生産性分析の基本は「1人あたりの~」という冠を付けるところにあるので、「従業員数」のデータは必須である。ところが、2011年4月以降の四半期報告書ではその記載が省略されてしまった。従業員数に係るデータは「不要である」と判断した人々は、企業外部の第三者が行なう生産性分析も「不要である」と判断したのであろう。
近年のディスクロージャー(企業情報開示)制度は退化するとともに、どうにもちぐはぐだ。例えば現在の連結貸借対照表では、棚卸資産を「商品・製品・仕掛品・原材料・貯蔵品」の5つに分類している(四半期連結財務諸表規則35条)。親子会社間の棚卸資産や生産プロセスを把握するために必要な情報だ、という趣旨らしい。
それなら連結損益計算書でも、個別財務諸表と同様の製造原価明細書(財務諸表等規則75条2項)を添付して、整合性を図るべきであろう。ところが、連結損益計算書のほうには、そうした細かい分類は求められていない。
簡素化の趣旨のもとに従業員数のデータを削除するのであれば、連結貸借対照表の棚卸資産も簡素化してもらいたいものだ。貸借対照表は貸借対照表で完結し、損益計算書は損益計算書で完結するという「財務諸表の部分最適化」が、ディスクロージャー制度の基本的なスタンスのようである。
行きがけの駄賃として、あの「EDINET」というシステムも、困ったものだと指摘しておきたい。「証券コード」ではなく「EDINETコード」という別のコードを使わなければならないところが、縦割り行政の典型だ。
おまけにEDINETでは、「野村証券」「新日本製鉄」「富士フィルム」で入力すると、エラーになる。「野村證券」「新日本製鐵」「富士フイルム」が正式な会社名であることは十分承知しているが、もう少し柔軟性があってもいいだろう。
いまだかつて見たこともない
急成長と急失速を遂げたDeNA
今回取り上げるDeNAについても、EDINETで「DeNA」と入力すると、エラーになる。試しに「モバゲー」と入力してみても当然、ダメであった。
今回はそのDeNAと、同社の競争相手であるグリーを以下で検証していく。両社は東証マザーズ上場(DeNAは05年2月、グリーは08年12月)を経て、いまは東証一部(DeNAは07年12月、グリーは10年6月)にまで登りつめた。両社の上場には3年の差があるので、業績面ではグリーよりもDeNAのほうに「一日の長」がある。かといって、両社でダンゴレースを展開しているわけではない。任天堂やソニーのゲーム事業と比べると、その成長ぶりは著しい。