まず、「完全なる時読み師」であるUさんの投資行動は非の打ち所がありません。2007年のバブル絶頂期に「いまが頂点。これからは暴落する」と見事な読みをしてのけ、インデックス投信をすべて売却、元本100万円+36万8000円の利益を手にしています。また、暴落後の2009年3月には逆に、「いまが底値。これからは上昇する」と判断して、手持ちの136万8000円で同投信を買い戻し。そのまま市場は回復を続け、2014年1月には366万7600円まで残高が増えました。う~ん、うらやましいですね。10年でなんと3.7倍です。
しかし、実際はこんなにうまくいくことはありません。ふつうの人は絶好調の時期には「これからもガンガン上がるかも!」と期待してしまいますし、暴落の最中には「これからもまだまだ落ちるかも……」と怖くなります。世の中のニュースでも、そうした風潮を煽るような意見が出回りますから、いよいよまともな判断はできなくなります。
2人目の投資家Vさんは、まさにそんなふつうの人であり、「風潮を追い従った人」です。VさんもUさんのように機を見ようとしている点では同じですが、残念ながら読みを外しまくっています。暴落後の2010年初めに騒がれはじめた「株を脱出せよ、資産は現金で持て」といった専門家たちのアドバイスにうっかり従っています。そのときの売却額は94万2100円ですから、残念ながら100万円の元本を割っている状態です。
その後、世の中に「やっぱり株投資もいいのではないか」という風潮が広がると、またそれに乗っかってインデックス投信を買い戻しました。結果、2014年1月の残高は113万6400円。幸いマイナスは回避できましたが、この10年、Vさんが心穏やかな日々を過ごせたとは言えなさそうです。
「何とかしたい気持ち」こそが最大のリスク
最後の3人目のWさん、このいちばん怠惰な投資家が“私たち”です。この人は、マーケットのタイミングを読むなどということはいっさい放棄しています。2004年に100万円分を買ったきり、何もしないでひたすら持ち続けています。