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スマートフォンの理想と現実

絶妙のタイミングだったシャープ・鴻海の提携
両社の視線の先にあるものは「AppleTV」か?

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第22回】 2012年3月29日
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 しかしスマートフォンやタブレットの世界市場は、すでにブランドがある程度収束しつつある。大手としては、アップル、Samsung、NOKIA、HTC、日本勢ではソニーがギリギリ踏みとどまっているくらいだろう。

 そこに新たな事業者がポジションを得られる余地がない、とはいわない。実際、中国のHuawaiやZTEは新興勢力として大きくプレゼンスを上昇させている。ただその実現には、それこそ中国勢の人海戦術と同じかそれ以上に、ヒト、モノ、カネを、根性を据えて投入し続けるという、長く厳しい戦いが強いられる。売上規模ですでに鴻海グループに大きく水をあけられている現在のシャープには、率直に言って無理だろう。

 だとすると鴻海グループとの業務・資本提携は、手っ取り早く現在のスマートフォンの商流から利益を得るという意味で、最適であるといえる。実際、生産技術は「作り続けてナンボ」でもある以上、半分はナマモノのようなものであり、最終製品を市場投入できない(投入しても評価されない)としたら、代替手段を考えなければならない。

 iPhoneとAndroidが一世を風靡する昨今ではすでに忘れられてしまった感もあるのだが、古くはZaurus、あるいはPHS事業者のWILLCOM向け端末供給など、世間が見向きもしなかった時代から、シャープはスマートフォンに取り組んできており、日本勢では実は最も開発実績がある。

 ただ近年は、中国市場への進出が中途半端な状態となったり、マイクロソフト向けに開発したソーシャル端末“KIN”が発売後2ヵ月弱でプロジェクト終了の憂き目に遭ったりするなど、不幸と迷走を繰り返し、結果的にAndroidへの対応も遅れてしまったように見える。また、電子書籍サービス“GALAPAGOS”も、着想は極めて正しいアプローチながら、時間と忍耐をもって環境変化を待つことを必要とするため、即効性は低い。

 今回の提携は、かつての実績を多少なりとも知る人間としては、若干のさびしさを覚えつつも、企業と技術が生き残る道としてはやむを得ないように思える。

納得感のある提携から、
スマートテレビの協業も?

 そうした観点から今回の提携を改めて検証すると、確かにいろいろ考え抜かれているようにも思える。たとえば出資比率が9.9%というのは、順列からすると筆頭株主となり、一見すると支配者としての存在感が大きい。ただそれは、単なるダンナではなく商流を交わす戦略的な事業提携である以上、鴻海グループが引き受けた責任の重さでもある。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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