スマートフォン向けのサービスを展開するIT企業が昨年以降、次々とベトナムへの拠点設置を決めている。
ソーシャルゲーム「mobage」を展開するDeNAは昨年9月、現地ゲーム開発会社を買収、11月には同国最大のネット企業VNGとの戦略的提携を決めた。サイバーエージェントも昨年10月、米国に次ぐ2拠点目としてホーチミンに事業部を設立。このほかネットサービスのGMOインターネットがハノイのソフト開発会社を子会社化、スマホ向けゲームなどを開発するグループスも米国と同時に子会社を設置するなど、怒涛の進出ラッシュが続く。
いったいなぜ、ベトナムなのか。理由は明白で、ベトナムが新たなウェブ関連技術者の「人材の宝庫」となりつつあるためだ。大学には技術者養成のコースが次々と設置され、10年間で5倍近く増えた。このため、「大学の日本語コースも多く、エンジニアの質は、日本の新卒2、3年目より高い」(山下浩史・GMO常務)。国もIT特区を設置するなど支援を強めており、グループスの梶原吉広社長も「創造的なゲームへの意欲がすこぶる高い」とほめちぎる。
ネット業界ではこれまで、開発を海外に委託する「オフショア開発」の進出先に中国やインドを選んでいたが、中国は人件費が上がり、インドでは文化の違いで失敗する企業が多く、現在、白羽の矢が立っているのがベトナムなのだ。
加えてベトナムは「IT大国の米国がまだ目をつけていない」(森徹也・DeNAシンガポール法人代表)。人材獲得が激化していないため人件費も安く向上心も旺盛で、日本IT業界にとって隠れた「秘境」といえる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)