一昔前まで、紙パルプ業界で主流だったのは新聞・出版用に開発された印刷・情報用紙だった。今日、想定外の勢いで需要の減退が続く中で、装置産業を代表する創業145年の老舗はいかに対処したか。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 この7月2日から、王子ホールディングス(HD)は、三菱製紙へ約100億円の払い込みを開始する。

 王子HDは、経営再建中の三菱製紙が実施する第三者割当増資を引き受けるほか、三菱UFJ銀行など三菱グループ計5社から株式を買い取ることで、出資比率を2.34%から33%に引き上げて王子HDの持ち分法適用会社とする。

 三菱製紙に対する払い込みは、2019年12月末までに完了する予定だが、約100億円を手にする三菱製紙はそこから本当の正念場を迎える。王子HDの辞書には、「誰かを助けてあげる」という文言はないからだ。近い将来、三菱製紙の解体が進む。そのように読む業界関係者は少なくない。

 旧王子製紙(現王子HD)が、06年に旧北越製紙(現北越コーポレーション)に対する敵対的買収を仕掛けてから、もうすぐ丸12年がたつ。その王子HDで再び覇権主義が復活してきた理由は、苦境が続く状況でも、全体として安定した営業利益を上げられるようになってきたからだ(図(1))。

 王子HDは、08年に起きたリーマンショックによる激震の余波が続いた10年以降、事業セグメントの中身を大きく組み替えた。

 まず、製紙会社にとって本流である「紙パルプ製品事業」(洋紙を中心とした製紙)、傍流の「紙加工製品事業」(段ボールや家庭紙などの加工品)、さらに付随する「木材緑化事業」、「その他事業」という伝統的な区分けを放棄した。

 その後、「生活産業資材」(段ボールや家庭紙などの加工品)、「機能材」(感熱紙や特殊紙などの製品)、「資源環境ビジネス」(木材パルプの販売やバイオマス発電による売電など)、「印刷情報メディア」(洋紙を中心とした製紙)、「その他」と、社内への意識改革の荒療治として序列を入れ替えた(図(2))。