心疾患でカテーテル治療を受ける湘南鎌倉総合病院の小林修三院長 写真提供:湘南鎌倉総合病院
社会の高齢化に伴って救急搬送が年々増加している。そのため国は「救急車の適正利用」を呼びかけ、軽症者は救急車を呼んではいけないという考えを暗に示している。だが一般の人が自分で軽症だ、重症だと本当に判断できるのだろうか。「軽症の顔をして重症だったケースは数多くある」と救急医が話す。ビジネスパーソンに起きた3つの実例とともに、見逃してはいけないポイントを解説する。(ジャーナリスト 笹井恵里子)
胸のあたりが「嫌な感じ」
急性心筋梗塞の症状だった
70代男性は真夜中、突然目を覚まし、半身を起こした。
何となく胸のあたりが嫌な感じがする。逆流性食道炎だろうか?と考えていると、隣に寝ていた妻が目を覚まして、「どうしたの?」と問いかける。
「いや、何となく。寝る前に食べすぎたのかもしれない」
男性が答える。
「なんだか痛そうね。念のために病院に行きましょう。私が運転しますから」と妻。
「いや、そこまでする必要はない」
男性は断った。そして後に「心筋梗塞」を起こしていたことが判明する――。
「実はこれ、僕の例なんです」と、湘南鎌倉総合病院の小林修三院長。
「この日の数週間前にも、また数カ月前にも同様の症状があり、でもしばらくすると治るので逆流性食道炎かなと思っていたのです。だから少しの間我慢すればいいと。しかし、この時は不調がしばらく続いたので、翌日に念のためCTの造影検査を行いました」
「すると左冠動脈が95%以上詰まっていて、急性心筋梗塞であることがわかったのです。循環器科に行くと、即手術に。カテーテルという細い管を血管内に入れて詰まりを取り除き、そのままそこにステント(金属の網状の筒)を挿入して再び詰まらないように措置をしてもらいました」
50年間医師を務めてきた小林院長であっても、自身の「重症」を見抜けなかったのだ。
「ええ、そうです。ですから一般の方はいつもと違う、何かがおかしいと思ったら、躊躇(ちゅうちょ)せずに救急車を呼んでください。軽症か重症かを判断するのは難しいですし、医療経済的にも病が進行する前に病院にかかって血液検査やCT検査などを行ったほうが低コストなんです。診断が遅れれば病気が進み、治癒までに時間がかかって、医師の手も医療費も一層必要になります」(小林院長)
「のどの痛み」は重病のサインだった
命を救った医師の「たった1つの質問」
命に関わる急性心筋梗塞は、働き盛りの40代でも突然起こり得る。
同院救命救急センター(ER)の救急医・関根一朗医師は数年前に診た「50代前半女性患者」のことを思い返す。
救急医療を受診する場合、救急車で搬送されるパターンと、患者自ら救急外来を徒歩来院(ウオークイン)する2パターンがある。この女性患者は、ウオークインで同院ERを受診し、「のどが痛い」と訴えた。意識レベルや酸素飽和度(SpO2)、血圧、脈拍などのバイタルサインに異常はなく、持病もなし。
当時はコロナ禍だった。だから「のどの痛み」であれば、普通なら「コロナか否か」に着目するだろう。だが関根医師の診立ては違った。







