日本でも話題になった「月の土地」の販売。アメリカのデニス・ホープが創設した会社、ルナ・エンバシーが販売し、すでに全世界で600万人以上が購入して、11億円以上を売り上げているという。「月の土地」は誰のものか?なぜ買えるのか?清水建設宇宙開発室、JAXA出身の宇宙ビジネスコンサルタント・大貫美鈴氏の『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から、内容の一部を特別公開する。(初出:2018年7月17日)

「月の土地」はなぜ売れるのか? 架空の土地で売上11億の謎【書籍オンライン編集部セレクション】

全世界で600万人以上が「月の土地」購入
すでに11億円の売上が立つ「夢商売」

 日本でも話題になったものに「月の土地」があります。

 月の土地を販売しているのは、アメリカのルナ・エンバシーです。創設者のデニス・ホープは、月は誰のものなのかという疑問を持ち、法律を調べたのだそうです。

 すると、宇宙に関する法律は世界中を見回しても、1967年に国連で発効された「宇宙条約」しかないことがわかりました。

 宇宙条約で決められているのは、政府間協定であって、「各国ともに国が勝手に宇宙のものを所有したりするのはダメ」と、「国家の所有」を禁じていることになっています。しかし、「民間だったらいいでしょう」ということで、月の土地を売り出したのです。

 また、1984年に発効された「月協定」では、国家だけでなく企業や個人も月の土地・資源の所有を禁止していますが、月協定を批准している国はほとんどなく、実質的な効力には疑問があります。

 そうして1996年からアメリカで、日本でも2002年から、実際に月の土地が販売されました。サッカー場くらいの1エイカーの土地が3000円足らずと、拍子抜けするような安さのためか、記念日やイベントのサプライズプレゼントとして人気が出ました。

 すでに全世界で600万人以上が購入して、11億円以上を売り上げています。

 アメリカでは、カーター元大統領やブッシュ元大統領、俳優のトム・ハンクスやトム・クルーズなども購入者に名を連ねています。