宮台 アメリカの憲法学者レッシグが自著『CODE』の中で述べていることだけど、万人が同じ価値を共有するのは不可能だし、多くの人は意味もわからずアーキテクチャにただのりして生きている。
アーキテクチャとはシステム設計のことで、設計次第で人々の行動を変えられる。そのアーキテクチャをわかっている人間はごく僅かしかいない。
だが、どんなアーキテクチャが自分たちを方向づけているのか自覚できる認識チャンスを開いておかなければならない。自身の存続のためにもね。そういったことはシェアハウスにもいえると思う。
万人が何かを共有するわけではないけれど、問題意識や志を持った人間がアクセスできるようにしておくことが大切なんだよね。
シンペー そうですね。僕らは、シェアハウス自体はただの「ハード(ハコ、入れ物)」としか考えてないんです。
その中で「ソフト(ライフスタイルなど)」を生み出し、自分たちなりのコミュニティを作りたいと思った。
「ハコは用意してあるから、あとはその中で馴れ合いで楽しめばいいよ」では、何の覚悟も生まれない。
シェアするって、そういうことだと思うんです。前回で宮台さんが指摘されていたように、絆コストを払う覚悟があるからこそ、本当に信頼し合えるし、助け合える。
宮台 もうひとつ大切なのは、価値を体現する「人」の存在が大事だ。さっき、資格審査やフォロワー切りが大切だって話したけど、それが単なる形式化、ルールに従ったシステム化すると必ず風化する。
そのたたずまいや表情を見れば、シェアハウスの価値が伝わる――そんなリーダーがいつの時代にも必要だと思う。ジョブズがアップルの価値を体現していたように。シンペーくんたちがリーダーになり、よるヒルズやそのライフスタイルをブランドとして、しっかり持続していって欲しいと思うね。
優先順位としては広げることよりも、ブランド価値を持続させることのほうが大切。いくらシェアハウスが普及したって、その意義や温度感が消えてしまったらしょうがないからね。その価値が意味あるものであれば、共鳴して集まってくる人間が輪を広げていく。その順番を忘れないことだね。
シンペー 常に自分たちのコンセプトや想いを育てながら、独自のソーシャル・キャピタルを構築することを意識して、自分なりの新しいシステムをつくる。それを自分たちの「ブランド」として価値あるものとして在り続けるということですね。