「自立」している人たちが増えると
社会や経済の回り方も変わる

宮台 冒頭で話したように、これから日本は経済的にどんどん悪くなる。

 そんな中、何が求められるのだろうか。

 これまで、日本はずっと経済を回すために社会を犠牲にしてきた。

 経済が良かった時でさえ、幸福度調査によれば日本は世界で75位より上になったことがない。

 経済が回っている時は、社会の空洞化が表面化しなかったけれど、経済が沈み始めたら「金の切れ目が縁の切れ目」であるような社会の包摂性の薄っぺらさが露呈している。

 自殺者、孤独死者は増える一方で、先進国の中では断トツにひどい状況だ。

 前回、絆のないやつは経済ゲームを持続できないって話をしたよね。そのことも含めて、「社会と経済は分けて考えられない」ってことを改めて認識する必要がある。

 社会と経済を保つために絶えずコストを払う。

 コストを払う動機づけは、社会的経済、経済的社会が持続しているからこそ与えられる。

 結果、社会的経済的共同体が持続する。そして、また動機づけが与えられる――といったような循環が回るようになれば、多少貧しくても大丈夫なんだよ。そして、それが生きるってことだよね。人間は何万年もそうやって生きてきたんだから。

 貧しくなることが問題の本質ではないんだ。

 政治や経済が回ると社会もよくなるんじゃないか、という従来型の発想ではなく、自分たちのコミュニティは自分たちで支える、行政や市場には依存しない。そういった「自立」している人たちがどんどん出てくると、社会や経済のまわり方も変わると思う。

シンペー シェアハウスというハードを利用しながら共同体を回していく若者は、これからも大勢出てくると思います。

 その存在意義や価値を大切にしながら、未来の社会システムの種にしていきたいですね。


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