しかし、そんな猿木選手が近大との試合中に負傷する。ボールを持って倒れ込んだ猿木選手に近大選手がアタック。これは事故だとされている。このプレーで猿木選手は頸椎損傷の重傷を負い、半身不随の身となった。そのため猿木選手は、選手生命はもちろん、商社マンになるという夢も絶たれたのだ。猿木選手の負傷、そして半身不随のニュースは、当時の関学生にとってはとてつもなく大きなショックだった。悲しかった。そしてまた、アメフトという競技の危険性も思い知らされた。

 このように、試合中の事故とはいえ、関学アメフト部には名プレイヤーを失ってしまったという悲劇の歴史がある。さらにいえば、関学アメフト部の悲劇はこれだけではない。2016年には高等部のアメフト選手が試合中に相手選手と接触。その4日後に死亡する事故も起きている。こうした悲劇の歴史があるからこそ、関学は今回の事件では日大に対してはもちろん、関東学生アメリカンフットボール連盟や日本アメリカンフットボール協会などの上部団体に対しても、断固とした姿勢で臨むべきである。そうでなければ、かつての黄金期を担った猿木選手に対して申し訳が立たない。

 今回の反則行為。監督の指示で行ったともいわれるが、日大の内田正人監督は63歳。僕より少し上の年齢で、この世代のアメフト関係者なら、猿木選手の悲劇を知らないはずがない。他の世代の監督以上に、アメフトの危険性、特にQBの置かれた危険性については分かっているはずだ。それなのに今回の反則行為は、指示があろうがなかろうが、けっして許されるものではない。もちろん、不祥事といったレベルでもない。ほとんど犯罪だ。刑事事件にしてもいいくらいだと思う。

 なお、反則プレーをした日大選手には、追加処分が決まるまでの試合出場停止処分が科せられ、日大との試合を予定していた法政大学、東大、立教大学が揃って試合中止を関東学生連盟に申し入れた。連盟は中止を決定したほか、日大の内田監督に対して厳重注意処分をしているが、それでは生ぬるい。今回の件は、廃部になってもおかしくないくらいの話なのだ。日大フェニックスといえば、関学ファイターズと並ぶアメフトの名門チーム。関学対日大戦といえば、プロ野球でいえば阪神対巨人の試合みたいなものだ。そのような名門チーム同士の伝統の一戦で、このようなあり得ない卑劣な反則行為をやることなど、言語道断である。