もちろん、退職の原因がすべて「悩みブレーキ」だと言っているわけではない。本当に問題のある上司の存在や、度を越した過酷な労働環境、職種や自分の強みとの相性など、退職、転職が望ましいケースも多く存在する。しかし、私の経験では、発展的、前向きな理由での退職より、圧倒的に「悩みブレーキ」を由来とした退職希望が多いと認識している。

「悩みブレーキ」の発生原因とは?

 では、なぜ多くの人は「悩みブレーキ」を踏んでしまうのか。

 私はよく自分の研修やセミナーで、「悩みブレーキ」の大きな原因の1つが「他責」によるものだと話している。

 下の「環境スライド:行動スライド」の図で説明しよう。現在の「悩み・不満」から抜け出す方法として、横枠の環境スライドでは転職することで「悩み・不満」を減少させようとし、縦枠の行動スライドは環境を変えるのでなく、自分の行動を変えることで「悩み・不満」を減少させようとしている。

 もうお気づきかもしれないが、「悩みブレーキ」を強く踏みやすい人は、環境スライドを選択する場合が多い。つまり、自分の行動を変えてみるという発想ではなく、「これは自分のせいではない、ほかに原因がある」と考え、退職に解決の道を求めようとする。

 しかし、本当に環境を変えるだけで悩みは減るのだろうか。未知の新環境という不確実性の高いものに、その可能性を賭けることが、果たして正しい選択なのだろうか。

 自分は変わらないまま事態が変わる、その可能性もゼロではないかもしれない。しかし、冷静に客観視した場合、まずは、自分のマインドセットや行動を少しだけでも変える努力をしてみるという選択肢はないだろうか。環境を変えるだけで「他責」にするのは、私には非常にリスクが高い方法に思えるのだ。

・他責傾向の人は、自分の行動を変えずに、環境を変える
・自責傾向の人は、自分の行動を変える努力を先にする

 ただし、「他責」傾向にある部下は、ほとんどが無意識にブレーキをかけている。そして、残念なことに、部下の「他責」傾向や悩みブレーキに対する対処法を知らないリーダーが多いのが現状だ。