「労働力の流動化」などと言われるようになり、転職に対する抵抗感も薄れてきた。そんな時代の空気を吸っている若い世代は、今の職場に納得いかないことがあると、すぐに転職を考える。
だが管理職にとって、自分の部署に配属された若手が辞めていくのは、当然のことながら気分のいいものではない。気分だけの問題ではない。管理職としての評価面でもマイナスになりかねない。仮に評価面に影響しない場合でも、自分の管理能力を否定されたような、後ろめたい感じになる。
ゆえに管理職としては、若手がすぐに辞めてしまうような事態は極力避けたい。ここ30年を振り返ってみても、新入社員(大卒)の3割が3年以内に転職している傾向は変わっていないが、不況の時期にもせっかく就職できたのに辞めてしまうのだから、求人が多くなるにつれて優秀な若手が辞めていくといった事態が頻出するはずだ。やる気がなく仕事のできない人が辞めていくのであればダメージも少ないが、仕事のできる人物、やる気のある人が辞めていくような事態は何としても避けたい。
そこで今回は、なぜやる気のある若手が辞めてしまうのか、その心理的背景を探り、どうしたら早期離職を踏み止まらせることができるかを考えてみたい。
また期待していた新人が
「辞める」と言い出した
中規模の電気機器メーカーの営業部長を務めるAさんは「自分の部署に配属された新人が昨年辞めてしまい、今年の新人も辞めると言い出した」と嘆く。
「そりゃ、ショックですよ。特に今回辞めると言い出したB君は、仕事の覚えが早くて、久々に優秀な新人が来たと喜んでいたんですよ。実際、取引先の営業に行かせたら、『いい新人が入りましたね。羨ましいですな』とわざわざ電話してくれるところもあったりして、非常に評判が良かったんです。ところが、いきなり『転職を考えているので、すみませんが辞めさせていただきたいんです』でしょ。何なの、それ、って感じですよ」