本当に妥当なのか検討したい
メーカーによるエレベーターの保守管理

 多くの方がエレベーターの保守はメーカーが行うのが当然だとお考えのようだが、それは、エレベーター会社による宣伝努力のたまものだ。自動車で考えれば、メーカーでなければ安全な法定点検や保守はできないなんて誰も信じていないだろうが、エレベーターではなぜか、そう信じられているようだ。

 しかし、現実は自動車と同じだ。世の中には「独立系」といわれる保守会社が数百社存在する。以前は独立系の会社にメーカーが部品を供給しないとか、しても故意に納期を遅らせるといった嫌がらせが横行していた。

 そんな中、人命保護のために迅速なメンテナンスを要するケースで、部品が速やかに供給されないという事態が起こってしまい、裁判にまで発展してメーカー側が敗訴。さすがに独占、寡占を防ごうとする流れには逆らえず、部品供給に関する不利はなくなっている。つまり、あえて高い保守料金を払い続けてメーカーにおつきあいする必要は全くないのだ。

 しかしそれは、メーカーにとっては大きな既得権益の喪失につながることなので、少なくとも互いのシェアは奪い合うことはせず、保守費用は同じように高止まりしている。歩調を合わせてメーカーによるメンテナンスの安全性神話を強調してゆこうという“暗黙の了解”が存在するというのが現実だ。

独立系は危険というフェイクニュース
エレベーターは最も安全な“乗り物”

 時々起こるエレベーターの人身事故も彼らの主張に戦略的に取り入れられ、「人命に関わるエレベーターの保守はやっぱりメーカーでなくては」という空気を生み出しているが、それはやはり空気でしかなく事実ではない。

 実はエレベーターにおける人身事故のほとんどのケースは、本来人が乗るエレベーターではなく、荷物を乗せる「簡易エレベーター」で起こっている。それに人が乗り込んで事故になったものや、その保守点検中のエレベーターシャフトに点検員が落下したといったものだ。

 一般的なエレベーターでの人身事故は非常に珍しい。記憶に新しいところでは、2006年に東京都港区では高校生の、2012年には金沢市でホテル従業員の命が奪われるという重大事故があった。いずれもすでに日本から撤退したシンドラー社製のエレベーターで起こったもので、どちらのケースも、扉が開いたままでエレベーターが上昇しだして挟まれるというものだった。調査の結果、エレベーターの機械そのものの構造上の問題が原因だった。マンションのエレベーターは、年間数千人が被害者となる自動車事故などとは比較にならないほど安全なものなのだ。