最初こそ、音を立てないよう気を使っていたが、途中からはもう抑えが利かない。とりつかれたように、食べ続けること20分。菓子は全て、愛由さんの胃袋に収まった。

「ふーっ」

 長く息を吐き、ベッドに横たわる……しかし次の瞬間、ガバッと立ち上がり、トイレに駆け込むと、食べたばかりの菓子を「ウゲッ」と吐いた。吐いて吐いて吐きまくる。全てを吐き切るために、指を舌の奥に突っ込んで刺激しては、吐く。

 30分ほどかけて、胃袋が空になるまで吐き切ると、何事もなかったかのようにベッドに戻り、ようやく眠りに就いた。

たぶん神経性過食症
でも、健康には問題ない

 実は愛由さん、独身だった26歳のころからずっと「摂食障害」を患っている。どうしてそうなったのかは覚えていない。特に、痩せ願望が強かったわけでもないのに、気がついたら始まっていた。

 摂食障害は精神疾患の一種。「神経性食欲不振症(AN)」と「神経性過食症(BN)」の2種類に大別され、ANには不食を徹底する「制限型」、あるいはむちゃ食いをしても自己嘔吐や下剤で排出することで低体重を維持している「むちゃ食い/排出型」がある。

 一方、BNは、むちゃ食いを繰り返しながらも体重増加を防ぐために、これまた自己嘔吐や下剤で「なかったことに」してしまうが、ANと違って激痩せに至らないことが特徴だ。そのどちらにも明確に分類されない摂食障害(例:むちゃ食い障害)は、特定不能の摂食障害(EDNOS)と呼ばれている。