そこで、自分のマネジメントスキルが問われる問題だと危惧したT課長は、Aさんの職務状況を確認する前に、Bさんを呼び出してしまいました。

 とはいえ、Bさんも大事な部下の一人です。しかし、先日の会議での通達が頭をよぎり、Aさんの退職回避を最優先してしまい、Bさんのことを始めから疑ってかかったようなヒアリングをしてしまいました。

 部下との信頼関係を重視していたT課長は、自分を「管理職として、失格なのではないか」と悩み、どんどん深みにはまってしまったのです。

 では、T課長はAさんに対し、どのように対応すればよかったのでしょうか。

相手の話を「事実」と
「感じたこと」で分ける

 産業カウンセラーとして、カウンセリングの現場で最も気をつけているのは、「個人の価値観」を明確にすることです。そのためには、傾聴技法の「意味への応答」という手法を使います。

「意味への応答」とは、相手の話の中に出てくる「事実(出来事)」と、「それによって感じた感情」の結びつきを理解して、相手に伝え返すことです。

 これにより、相手は「自分の価値観」に基づいて話をしていたことに気づきます。

 では、具体的にどのようにするのか、会話から学んでいきましょう。