「何か明るい話題はないですかねえ…」
お名前を挙げるのは控えるが、通信産業の改革に長年砕身され、先進のビジョンと抜群の行動力で、業界を牽引してきた大先輩と、先日お話をしていた時に、どちらかともなく出てきた言葉である。先方も私も、リスクは意識しつつ可能性を見出すことを旨とする気質を自認しており、それゆえになおのこと厳しさを感じている。
確かに、状況を直視すると、これ以外の言葉がなかなか見つからない。スマートフォン時代の通信インフラの課題は重くのしかかっているし、MNP(モバイルナンバーポータビリティ)を巡る事業者間競争はもはや過当といってもいい状況だ。サービス面でも、ソーシャルゲーム業界におけるいわゆる「ガチャ」の問題に関連するアイテムの現金取引や、プライバシー情報の問題など、難題山積である。
重苦しさに拍車をかけるのが、端末メーカーの先行きが見通せなくなっているということ。前回触れたシャープと台湾・鴻海グループの提携発表以外にも、ソニーの業績悪化や、東芝の完全撤退(携帯電話子会社である、富士通東芝モバイルコミュニケーションズの保有株式を富士通に売却)など、とかく後退局面が目立つ。
新しい試みが頓挫しはじめているのも、混沌を深める一因となっている。シャープの発表の陰で目立たなかったが、先日NTTドコモを軸とした合弁事業である「通信プラットフォーム企画株式会社」の解散が発表された。
この会社は、富士通、富士通セミコンダクター、日本電気、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、Samsungの5社で、主にLTE向け半導体の開発と販売を行おうと、昨年12月に設立されたもので、準備会社の期間の後に今春から取り組みを本格化させるはずだったが、わずか3ヵ月での清算である。