データサイエンスは自動化されるのか
KPMGコンサルティング
Advanced Innovative Technology
マネジャー
大手コンサルティングファームで大手小売、官公庁などでシステム企画、設計、開発、運用、PMOなどITに係る多岐な役割を経験。また大手インターネット企業においてAIやビッグデータ技術を用いたサービスの開発を担当。2017年より現職。「技術こそが世界を変える最重要ファクターである」を信条に、先端技術を用いたコンサルティングに従事している。
2018年1月、Googleは「AutoML」と呼ばれるサービスを発表しました。このサービスの優れた点は、高度な専門知識を有さない一般ユーザであっても画像認識モデルを構築できるようになった点にあります。例えばECサイトにおいて、対象商品と“見た目が似ている”商品を検索する機能を誰もが作れるようになったわけです。
人工知能やデータサイエンスの重要性が叫ばれている昨今、このように機械学習(以下、AI)を誰しもが使えるようにする動きが活発になっています。一昔前であれば、このようなAIの作成には、特定の数値解析ソフトウェアを用意する必要がありました。しかし最近ではオープンソースソフトウェア(OSS)であるscikit-learnやSpark MLlib等が普及し、プログラミング経験者であればAIモデルを作成することができるようになっています。また最新論文発表直後に、これを再現したソースコードが公開されることも珍しくなく、最先端の技術を手軽に利用できる環境が整ってきているように感じています。
このような動きは年々加速しており、売上予測等の時系列予測に使用できるProphet(Facebook提供)や、広告等の因果分析に使用できるCausal Impact(Google提供)など、特定業務領域にそのまま使用できるツール、また、AzureML(Microsoft提供)やDataRobotなど、プログラミング知識がなくてもAIモデルを構築できるツールなども出てきています。
プログラミングをしなくてもAIが使えるようなツール類の発展、普及を「アルゴリズムの民主化」や「アルゴリズムのコモディティ化」と表現する方たちがいます。様々な人がAIを使えるようになるという点において的を射た表現であり、まさにAIの構築が身近になり、簡単に使える時代が来ていると感じます
アルゴリズムがコモディティ化していく中で
重要なものとは?
AIが誰でも使えるようになってくる時代に、企業におけるAI活用方法はどのように変化していくのでしょうか。それは、活用する部署、企業の競争力の源泉や、利益をもたらす技術・ノウハウによって異なると考えます。
例えば自動車業界における自動運転やインターネット広告における高度な行動分析など、AIの技術力がそのまま競争力となる製品・サービスを主商品としている企業では比較的影響は少ないと推測しています。なぜなら、このような企業はアルゴリズムそのものが製品価値であり、差別化要因であるため、独自かつ高度なアルゴリズム開発が必須となるためです。もちろん前述したツールを使うことも多々あるでしょうが、そこには専門的な知識を持った技術者が試行錯誤し、他者より優れた商品を開発しようとするはずです。