同じことは、NHCがそれ以前に提案した案を採用しなかったことの是非にも当てはまる。NH-2案を拒絶する場合には、それを正当化するだけの公正妥当な理由が必要だ。

 また、さが美の取締役は、同社株主利益・企業価値の最大化を図るべき義務を負っており、もしNHC案がAG2案よりさが美の企業価値をより増大させるのであれば、先行して行われている公開買い付けの賛成意見を撤回し、反対意見を表明しなければ、取締役は善管注意義務違反に問われることになる。

 今回のベルーナによる公開買い付けは1株150円だという。百歩譲って、もしAG2による経営が企業価値を上げたのであれば正当化される余地はあるだろう。

 しかし、実質的にAG2が経営を担った30年2月期においては、売上高は前年比で約16%も下落、営業利益は前年の2億2000万円から一転して6500万円の損失に転落しているのである。すなわち、AG2は、1株56円という、時価からかけ離れた低廉価格で株式を譲り受けた上、業績の裏付けも十分でない中、今度は時価を大幅に上回る1株150円で売り抜けたことになる。わずか1年半足らずの間に約3倍の利益である。

 ただし、筆者はAG2がもうけたことを非難するものではない。筆者が指摘したいのは、AG2がもうけた分は、実際にはUFHDの株主の損害になっているということだ。UFHDは1年半前に時価での譲渡を申し出ているファンドがいるにもかかわらず、それより40%も安い56円という極端な安値でさが美の56%分の株式をAG2に譲渡している。

 加えて、当時のさが美は債務超過でもなく、弁済可能であるのに、UFHDはさが美に対する貸付金について巨額の債権放棄もしている。UFHDの株主からすれば、既にその時点で大きな損失を被ったことになる。

 さらに、今回の公開買い付けでは1株150円だ。わずか1年半の間に150円での譲渡先が見つかるのであれば、業績が今よりはるかに良かった1年半前に見つけられなかったはずがない。当時、UFHDの取締役は、最も高い価格で保有株式を売る努力という、株主に対する当然の善管注意義務を果たしていたとは言えまい。

 なお、さが美の取締役会は、今回は第三者委員会を組成して妥当性を検証したという。1年半前の稚拙な対応への批判を受けたものだろうが、その第三者委員会はわずか3名からなり、しかもその一部は前回の公開買い付けに賛同した委員なのである。