こうしたなか、女性たちに将棋を普及させる目的で運営されている別の制度が、「女流棋士」だ。女流棋士とは、将棋を職業として女流棋戦に参加する女性のことを指し、現在、60人ほどいる。中井広恵のように六段を持つベテランもいるが女流としての段であり、里見は五段だ。

 余談だが、女流棋士で思い出すのが林葉直子。11歳でアマチュア女流名人になり、女流名人4期、女流王将10期を制している。男性プロに勝ったこともある。端正な顔立ちの美人だった。ところが1998年、中原誠永世名人との不倫が『週刊文春』で暴露された彼女は、中原からの留守番電話を公開してしまう。相手が不倫には縁遠そうな知的な印象の中原だったことにも、世間は驚いた。

 それだけでなく、ヌード写真集を出したり、ポルノ小説を書いたりとにぎやかだった林葉は、対局をすっぽかすなど「お騒がせ女」ぶりが止まらず、95年に連盟を追われた。現在50歳で、病魔と闘っていると聞く。エキセントリックだったが「女性初の棋士になれた」との評もあっただけに、もったいなかった。

女性はなぜ
将棋の世界で弱いのか?

 女性はなぜ将棋の世界で弱いのか。第一には、女性の将棋人口が圧倒的に少ないことだが、厳しい意見もある。「女流棋士というだけでイベントなどに引っ張られ、ある程度食べていける甘い世界だから」だというのだ。確かに大盤解説やNHKの将棋番組の聞き役などは、女流棋士が務めることが多い。将棋の世界では女性であることが得なことも確かだ。香川愛生女流三段のような美女は引っ張りだこのようだ。

 一方、囲碁と比べて動きが激しいことが女性の頭脳に向かない、という説もある。昔、テレビのアナウンサーに男女の力量差の原因を問われた大山康晴十五世名人は、「ご婦人方は取った駒をため込んでなかなかお使いにならないから」と答えた。「女はケチだから」と言いたかったようだが、あのハゲ頭と丸眼鏡で訥々と語る姿が愉快だった。

 しかし、今は「女性の方が大胆に大ゴマを切ってくる」と言われる。「大ゴマを切る」とは、敵玉を仕留めるために自分の角や飛車を捨てることだ。男性に引けをとらない胆力を持った将棋女子が増え、早く女性棋士が誕生してほしいものだ。