「え、じゃあこの痛みは我慢するしかないんですか。いつまで我慢したらいいんですか」

 敦子さんは泣きそうになった。

「痛み止めを出しますから、痛いときは我慢しないで飲んでください。あとは、20代の頃から症状を繰り返してきたとのことですから、運動療法をしてみましょう。歩き方を変えたり、関節の柔軟性や周辺の筋肉を鍛えたりすることで、症状はだいぶ改善します」

 と医師。

「あのう、手術とかはどうなんでしょう」

 この大学病院は、人工関節の置換手術で有名だった。敦子さんがインターネットで調べた情報には、「やたらと手術を怖がって先送りにしておくと、大変なことになる。周辺の筋肉が弱って、たとえ手術したとしても治りが悪くなる。早く手術して楽になった方がいい。近頃の人工関節は長持ちするので心配ない」というものもあった。

 だが医師は、首を横に振った。

「人工関節は長持ちするようになったとはいえ、身体にとっては異物ですから、人体と違って再生することはないし、いずれ膝と人工関節の間に隙間ができて緩んできてしまいます。だから基本的には15~20年で取り換える必要が出てくる。働いている方や、運動しておられる方ならなおさらです。あなたは今40代ですから、60歳ぐらいでまた手術になりますよ。嫌でしょ。人工関節置換術は最後の手段です。

 僕は今まで変形性膝関節症の患者さんを何百人も診てきましたが、手術が必要になった方はほとんどいません。薬物療法と運動療法で治せますよ」

 15年、20年なんてあっという間だ。自身、100歳ぐらいまでは生きると思っている敦子さんの場合、もう3回ぐらいは手術しないといけない計算になる。

「そうなんですか、じゃあ手術はしない方がいいんですね。でも今は軽症だけど、将来、悪化する可能性もありますよね。グルコサミンとかコンドロイチンとかは飲まなくても大丈夫でしょうか。私の軟骨はすり減っているんじゃないですか」