昔から「かかあ天下とからっ風」が上州の名物だとされている(上州とは、群馬県の旧国名=上野のこと)。「かかあ天下」だから、亭主は尻に敷かれっぱなしなのかと思われがちだが、そうではない。この地方は江戸時代から養蚕業が盛んで、それを担うのはもっぱら女性であった。その稼ぎだけで一家の暮らしは十分に成り立ったという。逆に言えば、男性はそれこそ仕事をせずに遊んでいられたわけである。

 現代のビジネスマンからしたらなんともうらやましいかぎりだが、自由になるお金を持ってどう振る舞うかを、妻から始終見られているとなれば、それはそれでプレッシャーだったかもしれない。女遊びなどもってのほかである。今でも群馬県は、「夫婦間以外の性的関係は許せない」と考えている人の割合が全国第2位で、関東地方では異色の県だ。といって、しみったれたことをしていたら、それこそ「かかあ」の名がすたってしまう。

 というわけで、男たちは皆、宵越しのお金は持たない、新しいもの好き、見栄を張ってでも気前よく振る舞うなど、小気味のいい行動を取るようになった。江戸から近かったせいもあるのだろう、その影響は大きかったようである。

太陽光を浴びて、性格もカラっと

 年間日照時間も全国で6位と長いから、陽気でカラっとしており、性格にも裏表がない。ポーカーフェースなど、逆立ちしてもできそうにない。「新型車は群馬で売れ」という言葉があるというのも、よくわかる。セールスマンにとっては余分な駆け引きをする必要がないから、売れなかったとしてもサバサバした気持ちで帰れるだろう。ストレスなしに付き合える、現代社会ではまれな県民性といえる。

 ただ、これは裏を返せば、単純素朴で一本気、言葉もかなり荒っぽいから、粗野な印象を与えるところがある。東京に近いからといって、都会的なスマートさを期待すると、ため息をつかなくてはならない場面に遭遇することも少なくなさそうだ。でも、「さすが、上州の人。気風がいいですね」と持ち上げてやると、そのとおりどころか、こちらの期待以上に意気に感じたところを見せてくれるに違いない。


◆群馬県データ◆県庁所在地:前橋市/県知事:大澤正明/人口:200万8068人(H21年)/面積:6363平方キロメートル/農業産出額:2223億円(H19年)/県の木:クロマツ/県の花:レンゲツツジ/県の鳥:ヤマドリ

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